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社説・コラム

カトリックマニラ大司教区 タグレ枢機卿が広島訪問 平和築くのは日常から

 カトリックマニラ大司教区(フィリピン)のルイス・アントニオ・タグレ枢機卿(59)が2月5日、広島市中区の平和記念公園を初めて訪れた。枢機卿はローマ教皇(法王)フランシスコの顧問的な立場にあり、キリシタン大名高山右近の列福式のため来日。希望して広島に立ち寄り、原爆慰霊碑に花を手向けた。集まったフィリピン人信者約60人に向けて「平和を築くのは日常から。家族や友人を愛し、心を清らかに」と説き、中国新聞のインタビューに平和への思いを語った。(桜井邦彦)

  ―爆心地近くに立った思いは。
 昨日は長崎を訪ね、今広島にいる。ここは現在も戦争や痛みの記憶を感じられる場。私たちは互いを愛さなければならず、正義や、人への思いやりが平和に必要だとあらためて思った。破壊の中からも人は希望を持って立ち上がることができる。フィリピンと日本の関係も戦後、苦しみの記憶を癒やし尊敬し合う努力を重ね、よくなったと思っている。

  ―広島で原爆資料館を見て何を感じられましたか。
 こんなにも多くの方の命が奪われており、言葉を失った。同時に世界中で亡くなった人のことを思った。今でも、世界各地で暴力や残虐行為により亡くなっている人がいる。単に平和を語るだけでなく、平和を創る人でありたい。

  ―原爆慰霊碑では静かに目を閉じ、手を合わせておられました。
 私たち人類が互いを傷つけ合ってきた歴史を振り返り、神に対し許しを請うていた。愛を得て、憎しみを少なくするための恵みを与えてほしいと願った。

  ―カトリックの聖職者の立場で、世界平和をどう構築していきますか。
 神は教会の重要な役割として、何が本当の愛であるかを示すことを私たちに命じてくださった。全ての人に自分の身をささげることが本当の愛。そこには、自分たちを迫害しようとする人も含まれている。愛は迫害や暴力を止めて、私たちの魂を救ってくれる。平和は小さな行いから始まる。真実を見いだし、身近な人同士が互いを気に掛け合う。清らかな心が出発点だと思う。

  ―世界に多数存在する核兵器について、どう考えておられますか。
 かつて広島を訪れたヨハネ・パウロ2世や現教皇がおっしゃっておられるように、核兵器の生産と使用はやめるべきだ。 歴史的な事実に基づいて、私は今日ここで見たこと、聞いたことを周りの人に伝えたい。教皇にも広島を訪れてほしいと思っている。

(2017年2月20日朝刊掲載)

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