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社説・コラム

『ひと・とき』 映画監督・久保田桂子さん シベリア抑留 複雑な影

 「撮らせてもらった場所と人に、作品を『返す』ことができてよかった」。広島で取材した「海へ 朴(パク)さんの手紙」が上映されている広島市西区の横川シネマで舞台あいさつ。足掛け10年以上かけた自作の公開に感慨を深めた。

 戦後シベリアに抑留された広島県坂町出身の元日本兵と、韓国在住の戦友との絆を描くドキュメンタリー。監督は、韓国で預かった未着の手紙を坂町へ届けた。上映館へは元日本兵の家族も訪れた。

 映画は、戦場でもシベリアでも助け合って生き延びた2人の友情とともに、復員後の政治信条が対照的な軌跡をたどったことも浮かび上がらせる。「抑留がもたらした影響はとても複雑で、人生を振り回す戦争のむごさを描きたかった。そして、振り回されてもなお残る人と人の絆を」

 「記憶の中のシベリア」と題した2本立てプログラムで28日まで上映されている。(道面雅量)

(2017年2月22日朝刊掲載)

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