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[あしたを紡ぐ] ジェンダー視点 連続講座 広島の大河公民館 多様な問題学び熱気

 広島市南区の大河公民館が毎年開く連続講座には、地区内外から多くの参加がある。歴史、労働、育児、家族…。社会の多様な問題を、ジェンダー(社会的につくられた性別役割)の視点から読み直すシリーズだ。

 2010年に大阪市で母親が子どもを置き去りにして餓死させたケースなど、世間を騒がせた事件も検証してきた。「堅苦しいと避けられたり、個人的な問題と片付けられたりしがちなことを違う角度から見直すと、社会の構造的問題を発見できる」。講座を仕掛ける公民館専門員大津洋子さん(60)は語る。

 本年度の講座は、「地域から見える戦争とジェンダー」がテーマ。公的資料には説明が乏しい、戦争加害の歴史や占領軍慰安所の存在といった地域史に光を当てた。市内外から30~70歳代の男女約50人が登録。計4回に毎回20~30人が出席した。

 18日にあった最終回。講師を務めたひろしま女性学研究所(中区)主宰の高雄きくえさん(67)が、分厚く補修されて立ち続ける原爆ドームを「夜の女」になぞらえた栗原貞子の詩を引いて保存の光と影を語ると、受講者は口々に考えを語り出し、熱気にあふれた。

 男女共同参画社会基本法施行(1999年)後、各自治体は推進事業を展開してきた。市内の各公民館も年1回は実施。だが「施行から時間がたち、あからさまな性差別が見えなくなったことで、男女が仲良くしましょうという当たり障りのない事業が増えているようにも思う」と大津さん。教員や保育士などさまざまな職に就いた自らの体験を踏まえ、「女性の生きにくさなど小さな問題意識を大切にした講座にしたかった」と話す。

 講座を機に、受講者の自主学習グループも生まれた。ジェンダー視点で身近な問題を語り合う会。10人程度が月1回集まる。「実は思っている以上に多くの人が悩み、おしゃべりできる場を求めている」。手応えを感じている。(森田裕美)

(2017年2月22日セレクト掲載)

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