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被爆「伝承者」 135人「体験語り継ぐ」 

 被爆体験を語り継ぐため広島市が初めて募った「被爆体験伝承者」の研修は27日、初年度前半のプログラムを終えた。参加しているのは、19~78歳の135人。被爆者も13人いる。さまざまな思いを抱き、67年前の「あの日」に向き合う。

 研修は12日から市内で始まった。広島県内の121人のほか、北海道や大阪府、福岡県など10都道府県から14人が参加。これまでの6回の研修で原爆被害の概要や原爆開発の経緯、人を引きつける話し方などを学んだ。

 大阪府枚方市の高橋久子さん(68)は1歳5カ月の時、爆心地から約1・2キロの上柳町(現中区橋本町)の自宅近くで家族と被爆。父や祖母は被爆死した。

 年を重ね、被爆者であることを意識するようになったが、当時の記憶は全くない。「本当のことをもっと知りたい。講義を聴いて原爆の悲惨さをあらためて痛感している」と話す。

 ともに被爆した姉の川本恵子さん(71)=中区=も誘った。姉は、伝承者とともに市が募集した被爆体験の証言者を目指し、同じ研修を受ける。高橋さんは「いつか姉妹で証言を」と意気込む。

 若者の姿も目立つ。保田麻友さん(27)=南区=は平和関係のボランティアに携わり、体験を受け継ぐ必要性を感じるようになったという。「被爆した亡き祖父母が語らなかった胸の内に迫りたい」

 3年計画の研修プログラムのうち、本年度の後半は12月から始まる。来年度は被爆者から指導を受け、最終年度に語りの実習を積む。(田中美千子)

(2012年7月30日朝刊掲載)

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