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社説・コラム

放影研開設70年 丹羽理事長に聞く 人体の影響 解明進める

5~10年 戦略に盛り込む

 日米両政府が共同運営する放射線影響研究所(放影研、広島市南区)の丹羽太貫理事長は7日、6月に示す当面の研究の戦略に、放射線が人体に影響を与えるメカニズムの解明を盛り込む考えを明らかにした。放影研が10日で開設70年になるのを前に中国新聞のインタビューで語った。

 約12万人の被爆者の健康状態を追跡している放影研の疫学研究では、放射線により発がんリスクが高まることなどが分かっている。丹羽理事長は過去の実験データや、今の高度な技術の活用で「メカニズムの解析を進めることができる状況にある」と強調した。

 必要となる設備や施設規模などを今後5~10年の戦略に盛り込み、6月にも放影研の意思決定機関である評議員会に諮るという。老朽化した施設の移転については「戦略を固めてから議論すべきだ」と述べた。

 放影研の前身である米国の原爆傷害調査委員会(ABCC)は1947年3月10日、当時の広島赤十字病院内の一部を借りて研究を開始。50年に現在地の比治山公園に移った。70年を振り返り「ABCCの設立当時は軍事目的だった歴史もあって、研究の質は高いのに市民に誇りと思って頂ける組織になれていない」と説明。今後も市民や被爆者の理解は不可欠として「対話を重視したい」と述べた。(長久豪佑)

(2017年3月8日朝刊掲載)

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