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連載・特集

緑地帯 まち物語の復興力 福本英伸 <3>

 東北まち物語紙芝居化100本プロジェクトの最初の年、どのような経緯で福島に原発が造られたのかを語り継ぐ物語を作ることになった。

 福島県双葉町とともに東京電力福島第1原発が立地する大熊町の人が、地元で聞き取りをしてくれた。その中で、建設当時を知るお年寄りが「原発は最初、広島に造られることになっていた」と話すのを聞いたという。

 私は反射的に「そんなばかな」と思ったが、調べてみると1950年代に、「被爆地でこそ核の平和利用を」と広島での原発建設を促す米下院議員の動きなどがあったことを知った。

 福島での原発建設にまつわる、広島の被爆者の逸話が書かれた本(中嶋久人著「戦後史のなかの福島原発」)にも出合った。そこで挙げられた一人は、東北電力が原発を計画した同県浪江町の地主。終戦間近に兵役で広島にいて、原爆の惨状を目の当たりにした。その体験から核による発電を信じず、どう説得されようと土地を売り渡さなかったという。

 もう一人、福島第1原発の建設の最前線にいた東京電力の課長も出てくる。その人も同様に広島で被爆した。課長は大熊町民に対し「原爆に遭った私が安全だというのだ、信じてほしい」と説得したという。

 これらを並べ見た時、ヒロシマと福島の原発が深く結び付いた。そして私の中で、福島への支援は単に大震災からの復興支援ではなく、ヒロシマ人としての責務とも重なった。(まち物語制作委員会事務局長=広島市)

(2017年3月8日朝刊掲載)

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