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細る支援 東日本大震災から6年 <下> つながりづくり 存在感増す交流拠点

 東日本大震災や福島第1原発事故で広島県へ避難した人でつくる「ひろしま避難者の会アスチカ」(広島市西区)。代表の三浦綾さん(44)=安芸区=は2月上旬、山口市を訪れた。福島県葛尾村から避難した「山口県避難移住者の会」代表の浅野容子さん(64)=山口県阿武町=と会うためだ。

進まぬ実態把握

 「山口県への避難者がどこに何人いるのか、震災から6年たった今もはっきり分からない。知らない所で困っている人がいるかもしれない」。募る焦りを打ち明ける浅野さんに、三浦さんは「できるだけ早く、山口県の避難者が横のつながりを持てる態勢を築きたい」との思いを強めた。

 福島県は本年度、県外に避難した人たちの生活相談に応じたり、支援制度を伝えたりする拠点を、全国25カ所に設けた。中国地方では広島、山口、島根の3県と、岡山、鳥取の2県のそれぞれに1カ所を置くと決定。避難者向け交流会の開催や相談対応で実績のあったアスチカは昨年6月、3県の拠点を任された。

 三浦さんが浅野さんを訪ねたのはその一環。今後は、山口県内の避難者の交流会開催をサポートしたり、アンケートを通じて課題を探ったりする取り組みを検討する。島根県でも地元の避難者団体「311ご縁つなぎネットワーク わっかラボしまね」(大田市)と連携し、同様の事業を進める考えだ。

 そのために重要と感じるのが、避難者の実態把握だ。アスチカは112世帯334人を会員に持ち、名前や住所、世帯構成、連絡先などを把握している。広島県が復興庁に報告している避難者数(2月末現在)351人にほぼ匹敵する。高い組織力と常設の交流拠点を持つ強みは、行政に声を届ける上で役立っている。

孤立のケースも

 山口県は2月末現在で100人とされるが、浅野さんが電子メールでつながるのは約50人と半数にとどまる。福島県からは61人が避難しているはずだが、知っているのは5人だけだ。

 わっかラボしまねによると、避難者が地域での理解を得られずに孤立したり、移住の経緯を隠したりするケースもあるという。代表で、自らも東京から移住した梶谷美由起さん(45)=大田市=は「時間がたつほど心の傷は深まる。ためらわずに声を上げられる雰囲気をつくりたい」と語る。

 福島県は今月末、原発事故で避難区域外からの「自主避難者」への住宅の無償提供を打ち切る。三浦さんは、避難者支援を縮小する動きが、中国地方の自治体にも広がるのではないかと懸念する。「避難者の困り事や要望を吸い上げ、自治体などへ伝えるのは私たちの役割。培ったノウハウを、山口や島根でも役立てたい」と前を向く。(奥田美奈子)

中国地方の避難者数
 5県によると、東日本大震災や福島第1原発事故を機に各県へ避難している人は、2月末現在で計1662人。前年同期と比べ117人減った。一方、「ひろしま避難者の会アスチカ」が今月9日公表したアンケートによると、回答世帯の35・0%が避難先の自治体で「避難者登録をしていない」と答えた。避難生活しているにもかかわらず自治体が把握できていないケースが一定数存在するとみられる。

(2017年3月12日朝刊掲載)
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