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体験語り継ぐ思い新た 広島・長崎の朗読ボランティア初交流 被爆者の励まし 支えに

 広島と長崎にある国立の原爆死没者追悼平和祈念館で被爆体験記や詩の朗読をしているボランティア有志が初めて交流した。長崎市の「被爆体験を語り継ぐ 永遠(とわ)の会」メンバーが、平和記念公園(広島市中区)内の広島の祈念館を訪れ、朗読会にも臨んで体験継承の意義や課題を確かめ合った。(金崎由美)

 永遠の会は長崎の祈念館を拠点に2014年から活動し、登録は63人。原爆犠牲者の遺影や被爆体験記を収集、公開する館を訪れた観光客や修学旅行生を相手に読み聞かせているほか、小中学校にも赴いている。

 一方、05年に本格始動した広島では英文朗読者を含め77人のボランティアがいる。今回、活動の蓄積がある広島でぜひ研修を、と長崎側から要請があった。

 広島と長崎のそれぞれ20人が、観光客に交じり定期朗読会に出席。崩れた家の下敷きになった弟に水をあげられず、救出もできなかった後悔をつづった男の子の詩などを朗読する谷本幸子さん(81)=安佐北区=ら3人の声に耳を傾けた。長崎のメンバーも登壇し、永井隆編「原子雲の下に生きて 長崎の子供らの手記」の一編を読み上げた。

 続く交流会では「数ある体験記の中から作品を選ぶ基準は」「朗読のスキルをどう維持しているか」などの質問が出た。「被爆者に会って証言を聞き、できるだけ実体験に触れるようにしている」「被爆者が掛けてくれる励ましの言葉に支えられている」などと意見交換。被爆者の高齢化という現実も踏まえ、朗読を通した体験継承が持つ意義を胸に刻んだ。

 永遠の会代表の大塚久子さん(59)は「被爆体験のない者がどこまで伝えることができるのか、やりがいとともに葛藤の連続でもある。広島も同じだと実感できた」と語る。広島のボランティア、清水恵子さん(73)=東区=も「世界の人の心に被爆体験を届ける活動をたゆまず続けよう、という思いを共有できた」と話していた。このつながりを今後も大切にしていきたいという。

(2017年3月13日朝刊掲載)

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