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[核なき世界への鍵] 核兵器禁止 世界が議論 27日から国連で条約交渉会議

 核兵器を禁止し、全廃するための初の条約を作る交渉会議が27日、米ニューヨークの国連本部で始まる。31日までと、6~7月の2回、各国の政府代表が議論する。広島、長崎が強いられた非人道的な原爆被害についての共通認識が条約制定の土台になる。被爆国日本政府の参加、不参加を含む対応も焦点となる。

 交渉開始は昨年の国連総会で決議された。27~31日の会議は使用や保有、開発などの禁止事項のほか、条約の前文や付属的な制度が議題。推進する非核兵器保有国側は、違法性が指摘されてきた使用の完全禁止を明文化し国際規範として浸透させるのが最大の狙い。今月の議論を踏まえ、6月の会議開始までに条約の草案をまとめたい考えだ。

 核兵器の非人道性に焦点を当てて廃絶を迫る近年の潮流を生んだのは、2010年4月のケレンベルガー赤十字国際委員会(ICRC)総裁声明。被爆後の広島へ救援に入ったICRCの故ジュノー医師の手記を引き、医療機関の壊滅や放射線被害を訴えた。

 その上で核兵器のいかなる使用も、無差別攻撃や不必要な苦痛を与える兵器を禁じる国際人道法に違反する疑いが強いと指摘。使用禁止を明文化する条約の交渉を呼び掛けた。以後、被爆者の長年の訴えや科学者による最新の被害研究を背景に、非保有国の有志や非政府組織(NGO)が核兵器禁止を主導してきた。

 ただ、こうした動きに保有国は猛反発。米国の「核の傘」の下にある日本政府も現時点での条約制定に消極的だ。交渉を前に、非人道的被害を刻む被爆地からの発信が改めて重要になっている。(水川恭輔)

(2017年3月14日朝刊掲載)

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