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社説・コラム

『記者縦横』 カープ同様 条約応援を

■報道部・水川恭輔

 昨季の広島東洋カープの優勝はさまざまに勝因が語られた。ベテランと若手の調和、エースが抜けた穴を埋めようという使命感…。何より、勝てない時も声援を送り続けたファンの存在があったと思う。31日のセ・リーグ開幕を前に、27日に米ニューヨークで始まる「核兵器禁止条約」の制定交渉会議に状況を重ね合わせている。

 被爆者は長年、証言を重ねてきた。近年、核戦争で起こり得る飢餓などの研究も進み、その非人道性の訴えに厚みを増した。国内外で反核運動の輪に若者たちが加わった。米国大統領として「核兵器なき世界」を掲げたオバマ氏から、核戦力増強を辞さないトランプ氏への交代は、廃絶を願う国々や市民の危機感を高め、結束を強めている。

 機は熟した。ただカープほど市民の関心が高く見えず、もどかしい。核兵器の禁止と廃絶を全ての国に迫る「ヒバクシャ国際署名」にマツダスタジアム(広島市南区)の満員の観客が少しでも協力してくれたら、と思わずにいられない。

 昨年の国連総会第1委員会(軍縮)では123カ国が交渉開始に賛成した。一方、米国などの保有国や「核の傘」にいる国の多くは交渉を「ボイコット」し、実効性をそぐ戦略のようだ。

 条約案は早ければ年内の国連総会に諮られる。長丁場で厳しい交渉。廃絶へつながる条約の実現へ被爆地の声援は欠かせない。被爆者たちは21日午後1時から原爆ドーム(中区)近くに立ち、署名を集める。

(2017年3月17日朝刊掲載)

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