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中東問題 発信に貢献 広島市立大 宇野教授が定年退職

 中東地域研究の第一人者である広島市立大国際学部の宇野昌樹教授(65)が、今月末で定年退職する。研究活動だけではなく、2002年4月に同大に赴任してすぐに市民グループ「広島・中東ネットワーク」を立ち上げるなど、広島市民になじみの薄い地域の情報を発信してきた。

 最終講義は「シリア内戦がもたらす未曽有の危機~われわれはこの危機にどう向き合うべきなのか」と題した。1977~81年にシリアに住んだ経験を踏まえて「一般の市民が暮らす所は40年前から発展していない。南北経済格差の表れ」と指摘。さらに「米国だけでなく英国、フランス、ドイツも自国第一主義に走っていると考えると、世界が見えてくるのではないか」と学生らに投げ掛けた。

 「経済がうまくいっていれば、過激なイスラム主義は生まれない」というのが宇野さんの持論だ。欧州では移民2~3世になっても経済格差があるとして、解決のためには先進国が途上国の経済発展を導いていくべきだと強調する。

 母が被爆した被爆2世である。「差別の問題に関心があった」。それが中東の差別構造を研究する根底にあるという。

 4月からは広島大、広島経済大、福山大の非常勤講師となる。中東に関する講演会や映画上映会などを年1~3回程度開いている同ネットワークは今後も継続する。(二井理江)

(2017年3月20日朝刊掲載)

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