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戦艦大和 VRで再現 福山工業高生 反戦の思い込め 仮想空間で甲板歩行体験

 福山工業高(福山市)の生徒が、呉市で建造された戦艦大和の姿をバーチャルリアリティー(VR)技術で再現した。ゴーグル型の装置を使い、360度見回せる仮想空間で甲板を歩くような体験ができる。24日、呉市の大和ミュージアムで元乗組員が作品を体験し、「当時を思い出す」と語った。

 装置を着けると、赤れんがの呉海軍工廠(こうしょう)が現れ、呉港に停泊中の大和が見える。コントローラーを使うと、船の甲板や第一艦橋など4カ所を移動するような映像が映し出される。船の壁の汚れや床のへこみも表現した。

 この日、1941~43年に情報伝達係として乗船した戦艦大和会の広一志会長(93)=呉市=たちがVRを体験した。広さんは、持ち場だった艦橋の指揮所の場面を見て「眺めが良かった」と語り、「主砲の左側のはしごはなかったのでは」などと指摘。生徒がメモを取った。

 大和は45年4月7日に沈没し、3056人が亡くなった。再現したのは、沖縄特攻に向かう前の姿。広さんは「今でも亡くなった乗組員の声が聞こえる。若い人に平和を守ってもらいたい」と語った。2年桑田紘希さん(17)は「戦争を二度としてはいけないとの思いで作っている」と話した。

 VRやコンピューターグラフィックス技術で被爆前後の広島の再現などをしている計算技術研究部の1、2年生計8人が、約3カ月かけて作った。呉空襲前の航空写真、同ミュージアムの模型、図面などの資料を参考にした。

 4月16日、プロ野球ウエスタン・リーグの広島東洋カープ対ソフトバンク戦に合わせ、呉市の二河野球場に特設コーナーを設け、装置を使い一般の人に見てもらう予定。(高本友子)

バーチャルリアリティー(VR)技術
 コンピューターで作り出した映像や音で、現実の疑似体験ができる技術。ゴーグル型のディスプレーなどを使い、五感を刺激する。ゲームなどに活用されている。

(2017年3月25日朝刊掲載)

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