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ヒロシマ「裏切りだ」 核禁止交渉 日本不参加 保有国に同調 土壇場で決定

 米ニューヨークの国連本部で始まった「核兵器禁止条約」の制定交渉会議に土壇場で参加しないと決めた政府へ、広島の被爆者や市民は28日、「ヒロシマの思いと違う」と怒りの声を上げた。核保有国と非保有国の「橋渡し役」を言いながら、またも保有国に足並みをそろえた形の被爆国。被爆地との間の溝も深めた。(岡田浩平、長久豪佑)

 「怒り心頭。がっかりだ」。急きょ、広島市役所で記者会見した広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(75)は開口一番、政府の対応を切り捨てた。

 21日には原爆ドーム(広島市中区)近くに立ち、全ての国に核兵器を禁止し、廃止する条約の締結を迫る「ヒバクシャ国際署名」を被爆者7団体で集め、機運醸成を図ったばかり。「被爆者や若者で国連本部を囲み、政府と私たちの考えは違うと伝えたい」

 並んで会見した、もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(72)も憤りを隠さない。「歴史的な会議に日本政府が参加しないなんて、世界で恥をかく」。引き続き、会議への参加を求め、条約ができれば、加盟するよう訴えていく考えだ。

 今回の会議へは、各国の反核非政府組織(NGO)も条約推進国と連携し、後押ししてきた。

 現地の関係者と連絡を取り合う市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」の森滝春子共同代表(78)は「日本政府の態度は国際社会、被爆者に対する大きな裏切りで強く抗議する」。ただ、日本の不参加は非保有国の怒りを買い、条約実現へ結束をむしろ促した感があるとの報告も受けた。「先行して条約を成立させ、保有国を縛るべきだ」と、ヒロシマの願いの実現へ、期待を寄せた。

(2017年3月29日朝刊掲載)

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