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[核なき世界への鍵] 「ヒバクシャ」前文に明記 核禁止条約 オーストリア提案へ

 米ニューヨークの国連本部で開かれている「核兵器禁止条約」の制定交渉会議2日目の28日、条約推進国の一つオーストリアのハイノツィ駐ジュネーブ国際機関代表部大使は中国新聞の取材に対し、広島、長崎の原爆被害を踏まえて「ヒバクシャ」の言葉を条約前文に盛り込みたい考えを明らかにした。各国に働き掛けて実現を目指す。 (ニューヨーク発 水川恭輔)

 ハイノツィ氏は「前文に『ヒバクシャ』という言葉を使いたい」と明言。「広島、長崎の方々の苦難は特筆されるべきで、言及を望んでいるのも知っている」と述べた。会議に関わる反核団体の間で、交渉に参加していない日本などに条約への関与を迫る糸口として期待感が高まっている。

 会議はこの日から前文・目的を議論。ハイノツィ氏は核兵器使用の壊滅的被害を強調する必要があるとし「人々の苦しみに触れるのが重要」と発言していた。

 ほかには、アイルランドや南アフリカの政府代表が発言。禁止条約が現在の核拡散防止条約(NPT)体制を不安定にするという主張が保有国を中心にある中、禁止条約はNPTを補完し、核兵器廃絶に近づく狙いがあると前文で記すよう求める意見が目立った。米国と「核の同盟」を組む北大西洋条約機構(NATO)の加盟国からはオランダが出席しており、NPTの重要性を訴えた。今会期は31日まであり、条約で定める禁止事項と付随制度も議論する。

(2017年3月30日朝刊掲載)

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