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社説・コラム

社説 米中首脳会談 責任ある実効策を探れ

 トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は米フロリダ州での2日間の首脳会談を終えた。

 北朝鮮の核・ミサイル開発問題や、両国間の貿易不均衡問題を解決するため、協力と対話を強化していくことで一致した。

 トランプ氏の年内訪中にも合意し、協調関係はアピールした形だが、具体的な対応策は先送りにされた。両氏の下で築く新たな米中関係は依然として不透明で、物足りなさを感じる。

 準備期間が短く、具体的な案件を詰められる状況ではなかった。さらには、ともに内政に課題を抱え、譲歩できない事情もあった。まずは初顔合わせで互いの考えを確認し、信頼関係の構築を優先したのだろう。

 トランプ氏は「米国第一主義」を掲げ、大統領就任前から貿易問題などで中国を厳しく批判してきた。一時は台湾寄りの姿勢も見せ、米中関係は冷え込んだ。習氏にとっては、最高指導部が大幅に入れ替わる共産党大会を控え、米中関係の安定は急務だったといえる。

 今回の会談が実現した背景には、中国側のなりふり構わぬアプローチがあったとされる。正規の外交ルートではなく、トランプ氏の親族を通じて関係改善を働きかけるほどだった。

 両首脳は会談で、北朝鮮の核開発は「深刻な段階に達した」との認識で一致し、協調して朝鮮半島の非核化を目指す姿勢をアピールした。

 米国側は、会談であらためて北朝鮮への制裁を含めた圧力強化を求めたが、中国側は北朝鮮を完全に追いつめるのは得策ではないとの立場だ。

 北朝鮮は国際社会を挑発するようにミサイル発射を繰り返し、6回目の核実験を準備中とみられている。米中両国はかたくなな北朝鮮を国際社会との対話の場に引き出すため真剣に協力していく必要があろう。

 もう一つの焦点だった貿易不均衡問題では、「100日計画」の策定に合意した。一定期間内に米国の対中輸出を増やし、貿易赤字を削減する狙いだ。だが、これですべてが解決できるわけではなく、長期的な取り組みが必要だ。

 今後の議論は、新設で合意した「外交・安全保障」「経済」といった分野別の高官級の対話の枠組みに委ねられる。粘り強く話し合いを続け、安定した米中関係が築けるよう、大いに期待したい。

 会談初日に強行された米国のシリア攻撃は、少なからず波紋を広げたはずだ。トランプ氏から直接説明を受け、習氏は一定に理解を示したという。

 米軍のシリア攻撃を巡る国連安全保障理事会の緊急会合では、これまでロシアと共同歩調を取っていたが、首脳会談を受けて米国批判は控えてもいる。

 このタイミングでの攻撃は、習氏にとっては不意打ちだった可能性が高い。中国にとっては北朝鮮問題でのけん制と映り、習氏も内心穏やかではなかったはずだ。

 両国は国際社会の安定に大きな責任を担う大国である。協調関係を築こうと踏み出した姿勢は歓迎できる。ただ真価が問われるのはこれからだ。

 両国とも自国の立場やメンツにとらわれることなく、冷静な対話を重ね、世界とアジアの和平に向けて、実効的な方策を探る努力を続けるべきである。

(2017年4月9日朝刊掲載)

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