社説・コラム

社説 朝鮮半島緊迫 武力行使避け 対話探れ

 朝鮮半島を巡る情勢が緊迫している。北朝鮮が6回目の核実験や、さらなる弾道ミサイル発射の準備を進めており、米国が対抗措置として武力行使の可能性も示唆しているからだ。

 北朝鮮は何度も自制を求める国際社会の声を無視してきた。再び強行することは、断じて許されまい。

 トランプ米政権は、強硬な北朝鮮に対し、「あらゆる選択肢」の検討に入ったと表明した。実際に、原子力空母カール・ビンソンを朝鮮半島の近海に向かわせている。北朝鮮に影響力を持つ中国の重い腰を上げさせようとしているだけか、相当の覚悟をしているのか。「規格外」のトランプ大統領だけに予測は難しい。不安を感じる人が多いのも無理はない。

 米国は1994年の朝鮮半島核危機の時、北朝鮮への空爆を検討した。核開発をストップさせるためである。しかし、北朝鮮の反撃で甚大な被害が出る恐れのあった韓国が反対したため、実施は見送られた。

 トランプ氏はどうだろう。前任のオバマ氏は武力行使には抑制的だった。その反発か、考えは正反対のようだ。先日は化学兵器を使ったとして米国だけの判断でシリア軍基地を攻撃した。きのうはアフガニスタンで過激派組織「イスラム国」(IS)のトンネル施設を大規模爆風爆弾(MOAB)で空爆した。

 MOABが実戦で使われたのは初めてだ。核兵器ではないものの、米軍が持つ通常の爆弾の中では最も破壊力があり、安易な使用には疑問が残る。

 トランプ氏には、国連などの承認手続きのないまま、ためらいもなく武力を行使する危うさを感じる。北朝鮮が核実験やミサイル発射を再び行えば、対抗措置として軍事行動に出る可能性は否定できない。

 国際社会はまず北朝鮮に外交圧力をかけて自制するよう力を尽くさねばなるまい。中国が真剣に説得するのかが鍵になる。

 まさに今が正念場といえそうだ。きょうの故金日成(キムイルソン)主席の生誕105年、25日の朝鮮人民軍創建85年など、北朝鮮にとって節目が続く。政府高官も6回目の核実験は「最高指導部が適切と判断した時期に、いつでも実施する」と述べた。予断を許さないだけに、かつてない努力が、中国をはじめ国際社会には求められている。

 万一、北朝鮮が実験を強行したとしても、米国の武力行使が許されるわけではない。攻撃された北朝鮮の出方によっては周辺国を巻き込む恐れさえある。トランプ氏が、米国本土にまで届くミサイルだけを破壊すればいいという「米国第一」の考えで行動しないか、懸念される。

 日本政府は、朝鮮半島有事に備えた対応策の検討を始めた。日本海沿岸への難民流入への対応や、韓国にいる日本人の安全確保などである。政府として、万一への備えを考えるのは当然かもしれない。しかし最優先すべきは、軍事衝突をどうやって避けるかである。

 あくまでも対話と国際社会の包囲網による朝鮮半島の非核化を目指すべきだ。米国から事前協議で安全保障関連法に基づく協力要請があるかもしれない。単に追随するのではなく、平和的な事態打開策を粘り強く主張する必要がある。対話解決の道を閉ざしてはならない。

(2017年4月15日朝刊掲載)
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