社説・コラム

天風録 「北朝鮮の非道」

 毎朝、近所の中学校に通ってくる新入生が初々しい。大人びた顔や背の高い子もいるが皆、心細そう。思春期を送り、日ごと成長するのだろう。その少女も不安げな顔で写真に納まっている。横田めぐみさんである▲広島市で育っためぐみさん。父の転勤のため引っ越した新潟で北朝鮮に拉致されたのは入学の半年後だった。ことし40年になる。「どこまで、このような残酷、非道なことを」。母早紀江さんは憤りつつ、帰りを待つ▲北朝鮮情勢が緊迫の度を増す。「誰も拉致には関心がない」。国交正常化交渉を担当する宋日昊(ソンイルホ)大使がおととい述べた。日本への挑発か、駆け引きのつもりか。3年前に全面調査で合意しておきながら、信じがたい非道な言葉である▲自国へのミサイルを封じたい米国は先制攻撃をほのめかす。北朝鮮には焦りもあるのだろう。「朝鮮半島で戦争の火が付けば、日本に一番被害が及ぶ」。大使は脅しもかけた。実際そうなれば周辺国も無傷であるまい▲私たちはもちろん、海の向こうの拉致被害者にも戦災が降り掛かるのではないか。武力行使は絶対に避けねばならない。何十年も母国に胸を焦がし、不安に耐えるめぐみさんらのためにも。

(2017年4月19日朝刊掲載)
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