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社説・コラム

天風録 「潜む本音」

 心の奥底に潜んでいた本音が顔を出したと疑いたくもなる。きのう辞任した今村雅弘復興相の発言である。東日本大震災に触れ、「東北で、あっちの方だったから良かった」と失言した▲失言や暴言を繰り返す心理的メカニズムを精神科医の香山(かやま)リカさんが雑誌コラムで説き明かしていた。無意識に考えていることが、うっかり出てしまう過ちを「失錯行為」と呼ぶそうだ▲心のふたが知らぬ間に外れ、普段はうまく隠している本音が、最悪のタイミングでこぼれ出してしまうのだ、と。今村氏はこれまでも被災地へ向けた失言を繰り返し、物議を醸してきた。ふるさとを捨てるのは簡単だ、自主避難者は自己責任―。心のふたが軽いのだろう▲震災で家族を失い故郷を追われた人に、心を寄せるつもりがそもそもあったのか。「あっちの方」と言い捨てたスタンスに本音が潜み、東北を軽んじていたと思われても、仕方あるまい▲安倍政権の閣僚による問題発言が止まらない。気の緩みやおごりが、心のふたを簡単に外しているようにも見える。いったん発せられた言葉は、撤回しても謝罪しても、消えはしない。任命した首相にも「舌禍」の重い責任が当然ある。

(2017年4月27日朝刊掲載)

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