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被爆地への思い深まる 広島の原爆資料館東館展示一新 国内外観光客ら評価

爆風・熱線 広がりリアル/悲惨さの伝え方 重視し続けて

 原爆資料館(広島市中区)東館の展示が一新され公開が始まった26日、国内外の観光客や修学旅行生たちが訪れ、被爆地への思いを深めた。最新の映像技術など展示手法を評価する声が相次ぎ、被爆の実態への関心も呼び起こした。(野田華奈子、長久豪佑、伊藤友一)

 来館者に強烈な印象を残すのが、見学ルートの冒頭にある「ホワイトパノラマ」。原爆による非人道的な被害を1分半のCG映像で表す。フランスから観光で来た高校教員ブルジラル・エリザベトさん(63)は「爆風や熱線が広がり、街が一瞬で破壊される様子がよく分かった」と話した。

 ホワイトパノラマの手前では、被爆前の街並みの大型写真を掲示。「原爆が広島から何を奪ったか」がより分かるような展示方法を工夫した。

 外務省の若手職員研修で訪れた潁川(えがわ)俊平さん(28)は「ここに生きた人間がいて、生活があった。たった1発でどれだけのものが失われたか」と想像。「唯一の被爆国として日本ができることを考えたい」と真剣な表情を見せた。

 展示に関連した情報を検索できるメディアテーブルも多くの来館者が取り囲んだ。ただ、呉市の衛藤泰博さん(76)は「時間に余裕がある人は多くの情報を引き出せるが、時間のない人は難しい」と指摘も口にした。

 東館1階では、本館の休館中、被爆の実態を伝える実物資料や写真を展示。東京からの修学旅行で見学した高校3年有賀(あるが)しおりさん(17)は被爆者が着ていた衣服などを見て、「テレビや教科書で想像していたより深刻な被害」と受け止めていた。

 県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(75)は新たな展示内容を評価した上で「国際情勢が不安定な今だからこそ、核被害の悲惨さをどう伝えるか重視し続けて」と求めた。

(2017年4月27日朝刊掲載)

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