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社説・コラム

社説 閣僚の問題発言 政治家の資質問われる

 東日本大震災の被災地の先頭に立つべき復興相が代わった。震災が「まだ東北で良かった」などと発言した今村雅弘氏が、批判を浴びて辞任に追い込まれた。被災者を傷つける発言であり、言語道断だ。

 事実上の更迭は当然だろう。だが、そもそも今村氏を任命した安倍晋三首相の責任こそ問われねばならない。というのも閣僚や議員の問題発言、不祥事が相次いでいるからだ。安倍「1強」のおごり、気の緩みとの声が上がるのも仕方あるまい。

 さらに自民党の二階俊博幹事長が今村氏をかばうような言葉を述べたことも見過ごせない。今村氏の発言の何が問題であるのか、党全体として理解できていないのだろうか。

 安倍首相が後任の復興相に、被災地である福島県選出の吉野正芳氏を充てたのは、早々の幕引きを狙ってのことだろう。

 吉野氏自身が被災者であり、就任会見で「(今村氏の)発言は許せない」と憤ったのは無理もない。

 今村氏の言葉は議員としての資質さえ疑わせるものだ。ところが二階幹事長は受け止めが少し違うようだ。発言を巡る報道に「1行でも悪いところがあったら、すぐ首を取れとなる。何ちゅうことか」と批判。「言葉の誤解はない方がいいが、首を取るまで張り切らなくても」と不満を示した。

 閣僚を辞めるほどの問題ではないとでも言いたげだが、とんでもない。二階氏は、女性問題が報じられた中川俊直衆院議員についても議員辞職やむなしとの声を封じ、離党で済ませた。

 このような党幹事長の認識こそ、世論とのズレを示しており、根が深そうだ。党の体質を抜本的に改める必要があるのではないか。

 求められるのは、失言をしないよう気を付けるといったことではない。さまざまな被災地の復興をはじめ政治課題と国民の心情をきちんと把握し、政務に当たることだ。その認識が甘い閣僚や議員が目立つ。

 山本幸三地方創生担当相による「がんは文化学芸員。一掃しないといけない」という発言もしかり。文化財行政の理解が足りず、例に挙げた大英博物館についても誤って認識していた。

 今村氏は「古里を捨てるのは簡単だ」とか、原発事故で自主避難した人の帰還は「本人の責任」などと、実情を顧みない発言を繰り返してきた。

 震災が「まだ東北で、あっちの方だったから良かった」という今回の言葉には、地方を軽視した東京中心の考えも透ける。到底、容認できない。

 共同通信社が22、23日に実施した全国電話世論調査では、安倍政権の閣僚、政務官に問題発言や不祥事が続くことについて「緩みが出ていると思う」との回答が73%に達している。

 第3次安倍再改造内閣は、入閣待ち組を処遇したとささやかれた。支持率は安定しているものの、閣僚の相次ぐ問題発言は自覚不足をうかがわせる。首相は「東北の復興なくして日本の再生はない」と、復興に尽くすと強調してきたが、その言葉と整合性が取れていないようだ。

 もはや、おごりや緩みというレベルの話ではあるまい。閣僚はもちろん政治家として資質を欠く議員が多過ぎる。猛省し、襟を正すよう求める。

(2017年4月28日朝刊掲載)

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