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宏池会60年 岸田会長に聞く 権力に謙虚であるべき

 宏池会を2012年10月から率いる岸田文雄外相(広島1区)。創立60年の節目に練り直しを進める派閥の政策について「外交面では、『バランスと現実主義』を受け継いでいく」と説明。政権奪取に関する派閥のあり方は「権力に謙虚であるべきだ」と述べるにとどめた。(野崎建一郎)

「バランス」外交

  ―宏池会の外交政策をどう考えますか。特徴とされてきたハト派は「もう古い」との指摘もあります。
 宏池会が、日米安全保障条約の下、経済政策に専念する考えを打ち出してきた実績は大きい。時代が変わればキャッチフレーズも変わるが、「バランス」と「徹底した現実主義」を重視する考えは変わらない。

  ―バランスとは。
 まず、安全保障などの備えと和解のバランスがある。今、日本を取り巻く安全保障環境は厳しく、平和安全法制(安全保障関連法)など備えの態勢をしっかりつくる必要がある。一方、米国のオバマ前大統領の広島訪問や慰安婦問題に関する日韓合意など国際社会との和解も進めていく。国益追求とグローバルな課題とのバランスもある。こうしたバランスが外交への国民の安心につながる。

  ―核兵器廃絶に対する派閥のスタンスは。
 今までも、これからも核兵器のない世界を目指す目標は変わらない。安全保障環境の冷静な認識と、核兵器の非人道性に対する正確な認識を踏まえ取り組む。

  ―「核兵器禁止条約」の制定交渉を巡る動きでは、日本は国際協調をリードできていません。
 残念ながら、非保有国だけの一方的な議論が始まってしまったので、交渉参加は見合わせた。

  ―多くの被爆者が落胆しました。宏池会内にも、参加すべきだったとの意見があります。
 被爆者からはいろんな意見を聞いた。ただ、日本政府はこれまで、核兵器保有国と非保有国の協力を重視して核拡散防止条約(NPT)や包括的核実験禁止条約(CTBT)などの枠組みを進めてきた。この協力のプロセスを壊してしまったら元も子もない。

  ―政策の達成に向け、麻生派、谷垣グループと合流する大宏池会構想を実現させる可能性は。
 同じ思い、理念を持ち、協力する余地があるなら、連携するのは当然だ。切り口の一つが大宏池会構想だと思うが、具体的には何も進んでいない。

まず政策が順序

  ―先日、「安倍時代もいつか後が巡ってくる」と宏池会政権実現へ意欲を示しました。来年の党総裁選にはどう臨みますか。
 「安倍首相の時代もいつかは終わる。宏池会として何をするのか考えておこう」とは話した。宏池会政権という選択肢もあるだろう。ただ、宏池会は伝統的に権力に謙虚だ。まず政策で何をやりたいか考えた上で、権力とどう関わるか考えるのが順序だろう。総裁選については今言ったことしか申し上げていない。

(2017年4月30日朝刊掲載)

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