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連載・特集

変わる岩国基地 どうみる艦載機移転 <1> 岩国市自治会連合会会長 河角衛氏

 岩国市の米海兵隊岩国基地への空母艦載機移転計画は、国が配備の開始時期として示した7月まで約2カ月となった。市は5月中の住民説明会を経て、6月にも受け入れの是非を判断する方針だ。地域の将来を左右する重大な局面を前に、地元関係者や米軍基地と関わる5人に、課題や注文を聞いた。

地域住民の安心を第一に

  ―空母艦載機移転の動きが本格化しています。
 基地の影響は市内で地域差がある。ただ、「住み慣れた土地で安心して暮らしたい」というのが市民の共通の願いだ。滑走路が沖合移設された今も、JR岩国駅東側の人絹地区や基地と隣接する川下地区を中心に騒音被害で悩む人は多い。岩国市、山口県、日米両国は「どうすれば地域住民が安心して暮らせるか」を基本に考えてほしい。

  ―2005年、市自治会連合会は移転に反対する5万余の署名を集めました。
 米海軍厚木基地(神奈川県)に集中する基地機能を分散し、国内で均等に負担するべきとの考えで、岩国1カ所に押し付けられることに反対した。ただ、「今となっては受け入れもやむを得ない」との声がある。

  ―今後、隊員や家族の数は1万人を超えるとみられます。愛宕山には米軍家族用の住宅262戸が建設中です。基地の外で接する機会も増えます。
 人が増えれば摩擦が生まれるかもしれない。トラブルなく暮らすには、積極的な交流が欠かせない。集会所には、基地関連の住民が講師を務め、英会話やダンスを教えているケースもある。住民の高齢化で、交流の担い手となる30、40代の年齢層が薄いのが難点だが、基地の住民にも開かれた地域にしたいと思う。

  ―移転で岩国基地の航空機は約120機に上ります。昨年は高知沖で岩国基地の配備機が墜落する事故などがありました。
 まず、市街地の上空を飛行しないことを求めたい。そして事件や事故が起きた際、情報が素早く住民に伝わるような仕組みも大切だ。外交と国防は国の専管事項という認識があるかもしれないが、住民の生命と財産を預かる立場の市と県は、日米両政府に毅然(きぜん)として向かい合ってほしい。

  ―東アジア情勢が不透明です。北朝鮮は3月、在日米軍基地を標的にした訓練を行ったと発表しました。
 基地があれば不安を覚えない住民はいない。基地の能力が高まれば、それだけ狙われやすくなる。ただ、市と県は国防に口を出さないイメージだ。住民の安全を確保するための方向性が、あまり自分たちに伝わってこない。(聞き手は藤田智)

かわすみ・まもる
 岩国市出身。地元で53年間にわたり食堂を経営。1986年、今津3丁目自治会長、2000年に今津山手地区自治会連合会の会長に就任。12年から市自治会連合会会長を務める。

米空母艦載機移転計画
 在日米軍再編で米海軍厚木基地(神奈川県)から艦載機61機が米海兵隊岩国基地に移転する計画。国が1月に公表したスケジュールによると、早ければ7月にも配備が始まり、来年5月ごろまでに完了する予定。移転に伴い岩国基地の配備機数は倍増の約120機、軍人や家族は約1万200人となる見込み。

(2017年5月4日朝刊掲載)

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