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連載・特集

変わる岩国基地 どうみる艦載機移転 <2> 岩国商工会議所会頭 長野寿氏

駅前再開発 消費取り込む

  ―米軍が7月以降に予定する海兵隊岩国基地(岩国市)への空母艦載機の移転計画をどうみますか。
 米軍再編は国の専管事項だ。地元は現実的な対応が求められる。岩国商工会議所は2005年、民間空港の再開などを条件に移転を認める決議をした。

  ―米軍再編に伴う工事の経済効果は。
 06年から16年度までに、基地内外の住宅建設やインフラ整備などは919件。契約額ベースで計4733億円に上る。うち、市内に本社を持つ事業者は計262件、1033億円を受注した。建設業を中心に潤い、経営基盤が安定した。

  ―移転完了後も効果は持続しますか。
 今まで通りにはいかない。ただ、これまで単独での受注が困難だった地元業者も、全国の大手とJV(共同企業体)を組み、実績を積むことができた。業者はこの経験を生かす努力が必要になる。

  ―岩国錦帯橋空港(岩国市)は開港から5年目を迎え、3月には那覇線も再就航しました。
 16年度の利用者は過去最高の45万人。開港以来、国の年間需要予測の35万人をクリアし続けている。那覇線は1日1往復ある。米軍の専用便は週数便と聞いており、米軍関係者にとっても利用しやすいはずだ。

  ―移転後、基地関連の人口は1万人を超える見込みです。商機は増えますか。
 市人口の1割に匹敵し、生活関連全般の消費拡大を期待している。米軍も、市内の事業者向けに備品発注の説明会を開いた。

 JR岩国駅前の再開発のスピードアップも急務だ。宿泊やショッピング、飲食などを一体的に楽しめる施設があれば、基地からも呼び込めるのでは。巨大な基地を支えるため、外国人をターゲットにしたビジネスも生まれるだろう。活性化の柱として、外資系企業の誘致も働き掛けたい。

  ―愛宕山の米軍住宅エリアや基地外での米兵の居住を不安視する人もいます。
 日米で文化的な違いはあるが、まずは交流が大事。隣人として協力し、軍人、軍属やその家族も日本社会の一員として住める、未来志向のコミュニティーづくりを目指したい。(聞き手は藤田智)

ながの・ひさし
 福岡県大刀洗町出身。同県の高校卒業後、岩国市内の建設会社に就職。1970年に長野総合建築事務所を設立した。岩国商工会議所では2000年に副会頭に就き、06年3月から会頭を務めて現在4期目。

(2017年5月5日朝刊掲載)

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