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連載・特集

変わる岩国基地 どうみる艦載機移転 <3> 愛宕山を守る市民連絡協議会世話人代表 岡村寛氏

軍事的脅威も拡大の一途

  ―米海兵隊岩国基地(岩国市)への空母艦載機移転に反対する理由は。
 さかのぼれば岩国基地の滑走路沖合移設への土砂提供と連動し、愛宕山地区には住宅団地が造られる計画だった。地域のために多くの地権者が土地買収に協力したが、山口県は事業を中止した。それは米軍再編計画が出てきたタイミングと重なる。行政にだまされた思いが拭えない。

 事業跡地では、艦載機移転のための米軍住宅が完成しようとしている。沖合移設は米軍機騒音の軽減などが目的だったが、基地機能の強化にすり替わったのも同然だ。国は米国の言いなりで、県は「地元の意向を最優先する」と繰り返すばかり。市は補助金獲得の条件闘争に終始している。私にはそう映る。

  ―愛宕山の米軍住宅262戸は7月末の完成予定とされます。住民生活への影響をどうみますか。
 262戸が全部埋まれば入居者数は500~700人に上り、車も500台以上が出入りするようになるだろう。事件や事故、その他のトラブルが心配だ。

 2010年9月、地元の男性が、岩国基地所属の軍属女性の車にはねられ死亡した。女性は通勤時を除く4カ月間の運転制限などを科されただけ。日米地位協定に守られ、刑事裁判は開かれなかった。今年、軍属の対象が縮小されたが小手先の対応にすぎず、根本的な解決になっていない。

  ―市は国に要望している43項目の安心安全対策の中に、地位協定の見直しも挙げています。
 国から明快な回答がなければ、市は「移転容認」とは本来言えないはずだ。住民説明会では、連絡協議会として43項目の達成度を細かく質問したい。

  ―北朝鮮情勢を巡る緊張感が高まっています。3月には、在日米軍基地に攻撃する訓練が実施されたと報じられました。国や市に何を求めますか。
 艦載機の移転が進んで基地機能が強化されれば、北朝鮮は岩国を大きな脅威と受け止め、最初の標的にするのではないか。国民、市民の安心安全をどう守るのか。本気になって取り組んでほしい。(聞き手は松本恭治)

おかむら・ひろし
 旧満州(中国東北部)生まれ、岩国市育ち。立命館大を卒業後、旧大蔵省などに勤務。2008年7月、複数の市民団体で「愛宕山を守る市民連絡協議会」を設立し、世話人代表に就いた。愛宕山訴訟の原告団長も務めた。

愛宕山地区の住宅市街地開発事業
 山口県住宅供給公社が1998年に着工。1500戸を造る計画だったが、地価下落などを理由に2007年に事業を中止した。09年、県の申請を受けた国が事業認可を取り消した。跡地は12年に国が購入し、艦載機移転計画に伴う米軍住宅の建設が進んでいる。国の認可取り消しは違法として、地権者だった住民たちが撤回を求める訴訟を起こしたが、昨年11月に敗訴が確定した。

(2017年5月7日朝刊掲載)

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