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喫煙は関係なく高いがんリスク 放影研の被爆者調査

 放射線影響研究所(放影研、広島市南区)は17日、広島と長崎の被爆者が固形がんにかかるリスクに関する調査で、「喫煙の有無にかかわらず、被曝(ひばく)していない人に比べてがんになりやすい」との結果を発表した。強い発がん作用のある喫煙の影響を含めた解析は初。喫煙は放射線によるがんの罹患(りかん)リスクに影響を及ぼさないことが分かった。

 放影研の研究では、被曝線量1グレイの人が固形がんにかかるリスクは被曝していない人のおよそ1・5倍。喫煙習慣がある被爆者を喫煙の年数や本数に応じてレベル分けし、それぞれのリスクを導き出したところ、いずれの喫煙レベルでも1・47倍で変わらなかった。このため、喫煙の有無に関係なく被爆者は高い罹患リスクを負っていると結論付けた。

 調査期間は1958~2009年。放影研が追跡調査している約12万人の被爆者のうち、58年時点でがんにかかっておらず、被曝線量が判明している10万5444人を対象とした。結果をまとめた論文は、米放射線影響学会の学術誌に掲載された。

 被爆者の固形がん罹患について、エリック・グラント主席研究員は放影研での記者会見で「放射線と喫煙のどちらの影響か区別できないことがあったが、今回の結果で放射線の影響と確信できる」と話した。放影研は「放射線防護などの対策に生かすデータをより確実にし、信頼性を高めた」としている。(野田華奈子)

(2017年5月18日朝刊掲載)

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