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アジア記憶遺産 莞蕾の記録申請 安来の加納美術館

 戦後、フィリピンの日本人戦犯の赦免を実現させた安来市出身の画家加納莞蕾(かんらい)(本名辰夫、1904~77年)の活動資料を、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」のアジア太平洋地域版に登録するよう、同市の加納美術振興財団(加納二郎理事長)が日本ユネスコ国内委員会に申請した。2018年春の登録を目指す。

 申請した資料名は「画家加納辰夫の恒久平和への提言 フィリピン日本人戦犯赦免に関わる運動記録」。多くの推敲(すいこう)跡がにじむ嘆願書草案やローマ法王らへの書簡、大統領府からの返書など、49~58年の242点(計575ページ)で構成する。

 莞蕾は、知人の元海軍少将がフィリピンの軍事法廷で死刑判決を受けたのを機に、49年から赦免を求める運動を始めた。日本兵に妻子の命を奪われた当時のキリノ大統領に、「赦(ゆる)し難きを赦す」よう、書簡を送り続けた。大統領は53年7月、収監者105人を恩赦で釈放した。

 莞蕾の四女で、財団が運営する加納美術館の加納佳世子名誉館長(72)は「莞蕾の恒久平和を願う思想はもちろん、赦免を決断した大統領のモラルも世界に広めたい」と話している。

 国内候補にはほかに、千葉県香取市の「伊能忠敬測量記録・地図」、福島大(福島市)の「松川事件・松川裁判・松川運動の資料」が応募。国内からは最大2件が候補として7月に選ばれる。(小林正明)

(2017年5月20日朝刊掲載)

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