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「共謀罪」NO訴え 廃案求め抗議活動 中国地方 早期成立期待も 衆院委可決

 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案が衆院法務委員会で可決された19日、中国地方の市民団体や労働組合の代表者たちは法案への懸念を強めた。広島市中区では抗議の街頭活動があり、成立阻止へ向けて反対の世論喚起を誓った。一方、国民の安全と安心を守るために早期成立をと願う声も上がった。

 新設される「テロ等準備罪」は、犯罪を計画段階で処罰できる。広島弁護士会副会長の足立修一さん(58)は「テロ対策が目的と言えば、国民が納得すると考えている」と批判。「市民の頭の中を探る法案。憲法が保障する思想信条の自由や表現の自由を害する危険が高い」と警告した。

 市民団体「ピースリンク広島・呉・岩国」呉世話人の西岡由紀夫さん(61)=呉市=は、海上自衛隊呉基地(呉市)の動きをチェックしている。「艦船を見に行くだけで、テロの準備行為とされるかもしれない。市民活動が監視対象になり得るとなれば、新しいメンバーが増えない」と嘆く。

 可決を受け、市民団体「ストップ!戦争法 ヒロシマ実行委員会」は同日夕、広島市中心部の2カ所で抗議活動をした。メンバー約90人が「数の横暴で採決が強行された。民主主義が壊れる。廃案にするべきだ」などと主張。呉市の利元克己さん(76)は「自由に発言することができない社会になる」と訴えた。

 福山市の労働組合「福山ユニオンたんぽぽ」委員長の武藤貢さん(67)=福山市=は「飲み会で会社の悪口を言うのも捜査対象となるのでは」と懸念。市民団体「さよなら島根原発ネットワーク」共同代表の杉谷肇さん(75)=松江市=は「昔の治安維持法のようだ。国会で十分に審議されたとは言えない」と批判した。

 米海兵隊岩国基地(岩国市)の機能強化に反対する「愛宕山を守る市民連絡協議会」世話人代表の岡村寛さん(73)=岩国市=は「集会やデモへの参加に市民が足踏みするかもしれない」と憂う。児童文学作家の那須正幹さん(74)=防府市=は「原発や憲法改正への反対運動など、政府の方針に反する活動をする団体に、いくらでもプレッシャーをかけられる」と指摘した。

 比治山大元教授の阪本博臣さん(74)=廿日市市=は法案の早期成立を求める。「テロが起きてからでは遅い。国際協調を重視して情報を集め、発生を未然に防いでほしい」とする。自衛隊OBでつくる島根県隊友会会長の持田佳郎さん(70)=出雲市=は「具体的な脅威は目の前にある。国民の安全と安心を守るため、できることを考えるべきだ」と提唱した。

(2017年5月20日朝刊掲載)

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