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上関原発へ中電意欲 国のエネ計画見直し検討へ

 中国電力上関原発(山口県上関町)の新設に向けた動きが、にわかに目立ってきた。清水希茂社長は4月の決算会見で早期着工への意欲を表明。今月17日には、建設予定地の敷地内でボーリング調査を始めると発表した。国が現時点で原発の新増設を想定していない中で、着々と準備を進める背景には、国のエネルギー基本計画が今年、計画見直しの検討時期に当たることがありそうだ。ただ、原発を巡る課題は依然、山積している。(境信重、井上龍太郎、山本和明)

■背景

電源比維持に必要論

 中電は6月にもボーリング調査に入る理由を、新規制基準で断層の評価が重視されていることを踏まえて「将来を見据えデータを補強するため」とする。

 昨年1月、原子力規制委員会の適合性審査で鉱物脈に着目した新たな評価方法が島根原発2号機(松江市)で認められ、中電は8月に上関で実施する方針を決定。今回は「データを積み上げるこれまでの取り組みの一環」という。

 ただその視線の先には、国のエネルギー基本計画の見直しがあるようだ。

 2014年に閣議決定された現在の基本計画は「原発依存度を可能な限り低減する」としてきた。今年は計画見直しの検討時期に当たる。電力業界には「原発の新増設が盛り込まれる可能性がある」と期待する声がある。

 政府が示す30年の電源構成で、原発の比率は20~22%。老朽化した原発の「寿命」を原則40年とする現行の規制を当てはめると、30年の原発依存度は15%前後になる。5~7ポイント分不足することが、新増設の可能性を見いだす根拠だ。

 清水社長は決算会見で、「資源の乏しい日本で経済性や供給安定性、環境保全のバランスに優れる原子力の役割は大きい。一定の規模を維持するには新増設と建て替えが必要になる」と強調。早期着工への意欲を示した。

■課題

需要減 計画疑問視も

 電力需要が先細る中で、上関原発が本当に必要なのか、という声もある。

 東京電力福島第1原発の事故後、節電意識が広がり、電力需要は減る傾向だ。中電の販売電力量は10年度の623億キロワット時から、16年度は572億キロワット時と8%減った。それでも中電が上関原発の新設を目指すのは、将来、老朽化する火力発電所の代わりに、新たな発電所が必要になると考えているからだ。

 ではなぜ原発なのか。中電は「地球温暖化の原因となる二酸化炭素を継続的に減らすため」と説明する。50年までに温室効果ガス排出量を80%削減する目標の閣議決定も念頭に置く。

 最大の課題は、事故のリスクだ。中電は「新規制基準に確実に適合し、新たな知見に対しても適切に対応し、より安全性の高い発電所となるよう検討を進める」とする。

 ただ、深刻な事故が起きた際の住民の安全確保や、使用済み核燃料の処分など、根本的な問題は解決していない。

 上関原発を巡る動きに、反発の声も上がる。「脱原発へ!中電株主行動の会」の溝田一成代表世話人は「地震国の日本では原発を動かしてはいけない。中電の経営陣は計画を撤回し、再生可能エネルギーの活用などへ切り替えてほしい」と訴える。

(2017年5月22日朝刊掲載)

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