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被災者の力と愛 見つめて伝える 27日広島・28日尾道 映画「東北の新月」 オオハマ監督「思いはせる機会に」

 例えるなら新月のように、隠れた存在でも引力がある―。祖母が尾道市出身で日系カナダ人3世の映画監督リンダ・オオハマさんは、東日本大震災の被災地に生きる人々を見つめた新作ドキュメンタリー映画「東北の新月」に、そんな実感を込めたという。

 「悲しみを乗り越えようとする人たちを通して、人間の力と愛を伝えたかった」。カナダでの上映を経て、日本各地で上映会を開催中。被爆の焦土から復興した広島と長崎での上映には、とりわけ思い入れがあるという。

 オオハマさんは震災から間もない2011年6月、ボランティアで被災地を訪問。最初は「受け入れてもらえるか不安だったし、悲惨な状況を目の当たりにして映画を作る勇気がなかった」。だが、被災者の前向きに生きる姿に触れ、心が動いたという。

 カメラを手に訪問を重ね、11年8月~14年4月に撮影。岩手、宮城、福島3県の100人近い被災者に、震災当日とその後の生活を聞いた。津波に足を取られながらも生還して救護に当たった女性、福島県相馬地方の伝統行事「野馬追(のまおい)」を継承しようとする男性、福島第1原発から半径20キロ圏内でいち早く理髪店を再開させた夫婦…。一人一人のひそやかな思いを追い、その「引力」の証しを立てる。

 がれきが重機で無造作に撤去される光景が強く印象に残ったという。「そこには例えば家族の写真もあったはず。『被災者』とひとくくりにできないそれぞれの人生があった」。それらが闇に埋もれるのにあらがうような、98分の作品。「あらためて被災地に思いをはせる機会にしてほしい」と願う。

 中国地方では2カ所での上映が決まっている。27日午後2時から広島市中区の原爆資料館メモリアルホール。千円、65歳以上と学生500円。28日午後2時からは尾道市のシネマ尾道。1500円、65歳以上と学生千円。(鈴木大介)

(2017年5月23日朝刊掲載)

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