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騒音被害 想像もできぬ 見返り財源で活性化を 艦載機移転 岩国市説明会 地域で意識隔たりも

 岩国市の米海兵隊岩国基地へ7月以降、空母艦載機61機が移転する計画を巡る住民説明会が21、23日に市内4会場であり、延べ492人が参加した。騒音被害や事件事故の増加などを懸念する意見があった一方、受け入れの見返りとして地域振興策の充実に期待する声も聞かれた。

■安心安全

 「騒音に苦しむ市民の生活を理解しているのか」「どんな騒音被害が出るか想像もできない」―。岩国基地の米軍機が約120機に倍増する移転計画に対し、反対派を中心に騒音悪化を不安視する発言が相次いだ。

 移転後に1万人を超える米軍人や軍属の事件事故を危惧する住民は、市が国に求めた安心安全対策のうち「基地外居住者の居所の明確化」「日米地位協定の見直し」が未達成となっている点をただした。

 北朝鮮情勢の緊迫化で岩国基地が弾道ミサイルの標的にされているとし、「恐怖を感じている。状況を分かっているのか」と市に詰め寄る住民も。福田良彦市長は「有事のあらゆる想定、準備をしておく」と応じた。

■地域振興

 中山間地域の商工観光振興、道路整備、子育て支援、英語教育の充実…。移転の受け入れを念頭に、国からの財源を生かした地域活性化を求める意見が目立った。

 複数の住民が「財源確保につながるなら移転は仕方ない」と受け止め、福田市長も「財源がないと、いろいろな事業はできない」と説明。これに対し、反対派は「基地を大増強する金で、子どもたちに胸を張って良いことをしたと言えるのか」と批判した。

 日米共同使用を前提に愛宕山地区で建設が進む運動施設の利用への関心も高かった。市は、岩国運動公園と同様の利用ができるように米軍、国と調整していると説明。福田市長は「市民が使いやすい施設になるように考えている」と強調した。

■温度差

 開催地によって住民の意識に温度差も見られた。騒音被害のある市南部の由宇町と基地に近い三笠町の会場では、移転に反対、賛成の立場から意見が交錯。特に三笠町では、双方から拍手や激しいやじが断続的に起き、説明会の時間延長を要求する声も上がった。

 一方で、騒音などの影響が少ない市北部の美和町と西部の周東町の会場では、移転への反対意見はあまり聞かれなかった。「豊かな自然などの地域資源を米国人との交流に活用すべきだ」と提言する人もいた。

 全日程を終えた福田市長は「さまざまな意見がある中で現実的な接点、着地点を見いだすことが必要だ」と述べた。

≪住民説明会での主な意見≫

安心安全
・艦載機移転で騒音が増し、米軍関係者による事件事故の不安も増す
・日米地位協定が見直されない限り移転に反対すべきだ
・基地外居住者の実態調査をしてほしい
・北朝鮮からミサイルが飛んできた時の対策は
・住宅防音工事の対象区域を拡大してほしい
地域振興
・子育て支援などの財源確保につながるなら、移転はやむを得ない
・愛宕山地区の運動施設は移転のデメリットを補える効果がある
・基地に依存しないまちづくりをすべきだ
・米国人の増加をグローバル感覚や英語力を磨く施策に役立ててほしい
・日本の歴史や文化を米国人に伝える交流の場をつくってほしい

(2017年5月25日朝刊掲載)

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