×

ニュース

変わる国際情勢 核廃絶どう歩む オバマ氏広島訪問1年 平和願い演奏・証言

 広島は27日、オバマ米大統領(当時)の訪問1年となった。広島市中区の原爆ドーム前ではNPO法人主催の平和を願うコンサートがあり、「オバマ効果」で入館者が増える原爆資料館は観光客であふれた。国際情勢が変化する中、核兵器廃絶や平和構築に向けどう歩みを進めるか。被爆者や市民たちが自らに問い、新たな模索を始めている。(野田華奈子、水川恭輔)

 コンサートでは、安佐南区出身で被爆3世のピアニスト萩原麻未さん(30)が、約800人を前に「アベ・マリア」などを演奏。広島インターナショナルスクール(安佐北区)の子どもたちが合唱した。「世界中の人が音楽を楽しめる環境になれば。自分の演奏で少しでも幸せを感じてもらえるなら、どこへでも行きたい」。萩原さんは終了後、平和への思いを語った。

 オバマ氏の訪問は広島への関心を集め、原爆資料館の昨年度の入館者数は約174万人と過去最多。オバマ氏が来館時に市へ贈った折り鶴展示の前では、国内外の観光客が足を止める。

 カナダ・トロント市のブライアン・オニールさん(63)は「オバマ氏訪問で広島に興味があった。ここは核兵器を持つ愚かさを教えてくれる」。国連で3月に交渉が始まった「核兵器禁止条約」制定の必要性を感じ、6月に再開される交渉の行方に関心を持つ。

 資料館では、被爆者の寺本貴司さん(82)=廿日市市=が学生や市民を前に「あの日」の証言活動をしていた。オバマ氏が「ヒロシマ演説」で、多数の市民、朝鮮半島出身者、米国人捕虜たちの犠牲に触れたことも紹介した。

 この1年で米政権は代わり、北朝鮮の核・ミサイル問題は深刻化する。「なぜ広島を訪れるのが大事か、より深く考えてもらうきっかけになる」と考え、オバマ氏の演説を引用した。

 広島女学院高1年の中井志野さん(15)=広島市佐伯区=はこの日初めて、ドーム近くであった核兵器廃絶の署名活動に参加した。「一人一人の思いを集めれば、きっとなくせる」。被爆地の若者の使命を感じている。

(2017年5月28日朝刊掲載)

年別アーカイブ