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社説・コラム

天風録 「微力だけど、」

 原爆の犠牲になった子どもを慰め、平和を願う像を―。広島市の平和記念公園に原爆の子の像が立つ。被爆10年後に白血病で亡くなった少女の同級生らが賛同の輪を広げ、建立した。思えば、対岸の原爆ドーム保存も署名運動に立ち上がったのは子どもたちだった▲真っすぐな志は大人の心を動かすのだろう。国際世論に挑むこちらの若い力にも期待したい。高校生平和大使である。8月にスイス・ジュネーブの国連欧州本部を訪れ、核兵器廃絶を訴える。20回目となる大使の結団式が先日、広島市内で開かれた▲初めての大使派遣は1998年だ。インドとパキスタンの核実験に衝撃を受けた長崎市民が、国連へ届ける署名を託したのが始まり。以来民間団体が小口の寄付で運営し、高校生を国内外へ送り出してきた。長崎で始まった活動は今や全国に▲核兵器禁止条約が議論のテーブルに載った今年は広島県内の3人を含む15都道府県の22人が務める。希望が見える一方、核を巡る厳しい世界の現実には、くじけそうになることもあろう▲そんな時は歴代大使が自らに言い聞かせてきた合言葉を思い出せばいい。「微力だけど無力じゃない」。支える大人も胸に刻みたい。

(2017年6月20日朝刊掲載)

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