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[核なき世界への鍵] 条約「生き残った務め」 広島の被爆者 田中さん訴え

 広島市東区の被爆者、田中稔子さん(78)が19日、米ニューヨークの国連本部であった非政府組織(NGO)主催のイベントで72年前の体験を語った。同本部で「核兵器禁止条約」の制定交渉会議が続く中、「条約締結へ、多くの国の支援を」と呼び掛けた。(ニューヨーク発 水川恭輔)

 田中さんは、被爆者が世界各地で証言するNGOピースボート(東京)の船旅に4月から参加し、今回の会議に合わせニューヨーク入り。6歳で被爆する前に幼稚園に通った広島市の旧中島地区(現中区の平和記念公園)は壊滅し、同級生の命が奪われたといい「禁止条約実現への訴えは、原爆から生き残った者の務め」と力を込めた。各国の反核団体のメンバーらが聞き入った。

 一方、交渉会議は同日、核保有国が条約に加盟する道筋を巡る議論に入った。南アフリカが、核兵器を持ったままで参加を認める代わりに期限を設けた廃絶義務を課すという修正案を提示。「核の傘」に頼る非保有国の加盟へも同様に依存脱却の期限を課せるような内容も含み、メキシコなどが前向きに応じた。

 NGO枠で発言した長崎原爆病院の朝長万左男名誉院長(74)は保有国や日本の条約参加が不可欠と強調。「これらの国々に参加を促す人類の英知に期待する」と求めた。日本被団協の和田征子事務局次長(73)は草案前文での被爆者への言及を歓迎した。

(2017年6月21日朝刊掲載)

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