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カナダで活動 被爆証言の記録 広島出身のランメルさん、「忘れないでヒロシマ」出版

亡父の思い出や高校生の反響も

 広島市出身で、カナダ西部のブリティッシュコロンビア州スコーミッシュに住む好村ランメル幸さん(80)が自身の被爆体験をつづった「忘れないでヒロシマ」(南々社)を出版した。かつての同僚で元もみじ銀行監査役の平野圭吾さん(84)=西区=から本を出すよう促されたのがきっかけとなった。(金崎由美)

 ランメルさんは古田国民学校(現西区)3年の時に校庭で被爆し、黒い雨を浴びた。市中心部の電力会社の職場で勤務中だった父を10日後に失う。戦後は広島相互銀行(現もみじ銀行)に務めた後、上京。日本に留学していたカナダ人のチャールズ・ランメルさん(77)と出会って結婚し、76年からカナダに住む。

 新著は、4年前に信仰するキリスト教の関係者向けに自費出版した同名の手記に大幅に加筆した。亡き父への思い、夫との移住当時の苦労などをつづる内容に加え、カナダでの証言活動について書き下ろした。

 ランメルさんが被爆体験を語り始めたのは、2011年の福島第1原発事故に衝撃を受けたからだ。「被爆体験を通して平和のため努力することが、残り少ない人生の使命」と一念発起し、夫と一緒にカナダ各地の学校を訪問している。

 平野さんとの縁も、そこから生まれた。昨年8月の中国新聞でカナダでの証言活動が紹介され、元同僚と気付いた平野さんが連絡を取った。最初の手記を読んで「異国でしなやかに、強く生きる被爆者の姿に感銘を受けた」と感じ、一般向けに再構成して出版するよう提案したという。

 完成した「忘れないでヒロシマ」からは、カナダ人の反響も伝わる。「カナダは核大国の米国、ロシアに囲まれている。核の問題はひとごとではないと気付いた」と言われたこともある。中国系の高校生は南京大虐殺について触れながらも「戦争に勝者なし」「若い人たちに語り続けて」と感想を寄せた。

 広島に里帰りしたランメルさんは平野さんと60年ぶりに再会し、中国新聞社を訪れた。「素晴らしい出会いの積み重ねによって出版できた。まさに奇跡。原爆被害が知られていない国で力の限り伝えていきたい」と意気込む。四六判200ページ、1296円。

(2017年6月26日朝刊掲載)

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