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2030年の比率3案 原発計画 中電に影響

 政府が示した2030年の原発比率の3案は、中国地方の原発計画にも大きく影響する。現状より比率を下げる「0%」「15%」案だけでなく、ほぼ維持する「20~25%」案でも、中国電力は島根原発(松江市)上関原発(山口県上関町)の計画見直しを迫られる可能性がある。(東海右佐衛門直柄)

■0%案

島根1、2号機「廃炉」

 30年までのなるべく早期に全原発を停止するシナリオ。島根1、2号機は順次廃炉となる。準備工事が中断している上関原発は建設中止となる。

 島根3号機も廃炉となるが、工事がほぼ完了しているため「既設」と位置付けられ、30年まで一時的に稼働が認められる可能性も残る。ただ、脱原発を決めての新規稼働には強い反発が予想される。

 中電は「エネルギーの多様性確保などから、選択肢たり得ない」と0%案に反対する。一方、政府の意見聴取会では意見表明希望者の約7割が支持。広島市中区での意見聴取会で発言した広島大の安藤忠男名誉教授は「原発は安全性に課題があり、リスクを将来世代に回すべきではない」と訴える。

■15%案

上関は中止見通し

 新設は原則認めず、稼働から40年たつ原発を順次廃炉にして原発比率を下げる。既に38年経過した島根1号機、同23年の2号機は、40年を過ぎた時点で廃炉になる。

 3号機は0%案と同様、「既設」と認められれば稼働する可能性があるが、議論を呼びそうだ。

 上関原発は建設中止の見通し。中電の苅田知英社長は7月の会見で、15%案には「上関原発は入っていない」との認識を示している。

■20~25%案

島根3号機稼働 1号機は不透明

 新設や更新で10年に26%だった原発比率をほぼ維持する。島根2号機は運転を続け、3号機は新規稼働させる。老朽化した原発の扱いが明確でなく、1号機の行方は不透明。新規立地の上関原発の計画が進む可能性が、この案で唯一残る。

 エネルギー基本計画の見直しを進める国の基本問題委員会委員で一橋大大学院の橘川武郎教授は「この案では計7基程度の原発新設が必要になるが、大半が増設。新規立地は世論の反発が強く極めて困難」。また稼働から40年を過ぎた原発の安全確認は「相当に厳格化される」と指摘する。

■今後の展望

「全廃」に支持 経済界は反対

 政府は近く、将来の原発政策を盛り込んだエネルギー・環境戦略を策定する。当初、政府は15%案を有力視していたもよう。国民には0%案の支持が多い一方、経済界は「実現可能性に乏しい」などとして反対している。

 策定は当初予定の8月末から9月以降へずれ込む見通しで、曲折も予想される。

<原発比率3案に基づく中国地方の原発計画見通し>
        0%      15%          20~25%
島根 1号機  ×   2014年ごろまで運転    △
    2号機  ×     29年ごろまで運転    ○
    3号機  ×        △            ○
上関1、2号機 ×        ×            △

    ○運転、△不透明、×順次廃炉、計画中止

記者の目

地域の「最善」 描き直す時期

 原発比率の議論が大詰めを迎える中、中国電力は「政府決定を待つ」姿勢を続け、原子力や石炭火力などの均衡を目指す従来の「ベストミックス」路線を維持している。福島の事故で原発をめぐる国民目線は一変し、再生可能エネルギー拡大の動きは加速している。地域にとって何が「ベスト」か。描き直す時期に来ている。

政府の2030年時点の原発比率3案

 福島第1原発事故を踏まえたエネルギー政策を決めるため、政府が6月に議論の材料として提示した。「0%」は国民の支持が多いが、電気料金の値上げや再生可能エネルギーの普及などに課題がある。「15%」は、30年以降に脱原発を目指すのか不透明。「20~25%」は原発の安全性への懸念がある中、新設ができるのか疑問視する声もある。

(2012年8月24日朝刊掲載)

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