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IPPNW最終日 脱原発の声目立つ 

 広島市中区の広島国際会議場で開かれていた第20回核戦争防止国際医師会議(IPPNW)世界大会は最終日の26日、原発問題を中心に討議した。参加者から脱原発を求める声が上がったほか、低線量被曝(ひばく)の人体に与える影響をめぐっては意見がぶつかる場面もあった。(田中美千子)

 原子力エネルギーをテーマにした全体会議では、4人が意見を述べた。京都大原子炉実験所の今中哲二助教は「地震大国の日本で原発を建設すること自体おかしい」と主張。IPPNW全地域代表のアンディー・ニーデッカー理事(スイス)は燃料となるウランの採掘時も被曝者が生まれることを問題視し、脱原発を訴えた。

 健康に影響を与える累積の被曝線量は評価が割れた。国際放射線防護委員会(ICRP)の丹羽太貫(おおつら)委員が「100ミリシーベルト以下では発がんリスクは明確に分からない」と説明すると、会場の医師から「低線量でも影響がある可能性を強調すべきだ」と批判が相次いだ。丹羽委員は「不安をあおるのも問題だ」と反論した。

 続いて、福島第1原発事故後の対応を広島の医師が報告した。広島大原爆放射線医科学研究所(南区)の神谷研二所長は、福島県民の健康管理調査について「住民と専門家、行政が情報を共有して進めることが大切だ。被爆者医療の経験と知識を生かし、支援を続ける」と話した。

 同大大学院の谷川攻一教授は、避難中の高齢者や病人が低体温や脱水症状などで亡くなった例を報告し、「緊急時の周到な避難計画を準備する必要がある」と指摘した。

IPPNW ビザ発給拒否で外務省へ抗議文

 IPPNWは26日、第20回世界大会閉幕後に広島市中区で国際評議員会を開き、今回の大会に参加予定だったナイジェリアの医師9人が日本政府に査証(ビザ)の発給を拒否されたことに対し、外務省へ抗議文を提出することを決めた。

(2012年8月27日朝刊掲載)

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