[「9条加憲」を考える 中国地方の国会議員に聞く] 自民党 高村正彦氏(山口1区)
17年7月13日
実現可能なベストの案
―現在の憲法9条の条項は維持しつつ、自衛隊を明記するという安倍晋三首相の改憲案をどう見ますか。
これまでの自民党内の9条論議の中で、最も穏健で抑制的な案だ。党総裁の安倍首相が2020年という目標と共に現実可能な案を打ち出したことによって、初めて政治的な課題になった。高く評価している。
―首相は「戦後レジームからの脱却」を掲げてきました。9条を含め抜本的改憲を目指していたのでは。
首相も理論上、(戦力不保持を定めた)9条2項を削除した方がいいと思っているはずだ。私を含め自民党議員の大半はその方がいいと思っている。
平和を実現するためには、外交に加え抑止力が要る。ところが、2項の戦力不保持というのは、抑止力を持ってはいけないということになる。忠実に読めば、自衛隊も違憲ということになる。現実的な平和主義にならない。
―では、なぜ首相は2項削除を打ち出さなかったのでしょうか。
2項削除は理論的にベストだ。ただ、現状では改憲の国会発議に必要となる、衆参両院の議員の3分の2の賛成を得るのは難しい。仮に発議できたとしても、国民投票で過半数の賛成を取ることは困難だ。
だから、1、2項は維持したまま自衛隊の存在を明記して、自衛隊が合憲であることだけについては一点の曇りもないようにしておこうということだ。実現可能なベストな案だと思う。
―憲法の条文で自衛隊を合憲にする手続きはなぜ今、必要なのですか。
憲法学者の過半が自衛隊を違憲だと言っている現実がある。それを受けてほとんどの教科書に「自衛隊が違憲だという主張もある」と書かれている。自衛隊員は、有事のときに命を懸けて頑張ってくれる。違憲であると解する余地をなくすのは政治家としてはもちろん国民としての矜持(きょうじ)(自負)に関わる。
―党副総裁で、党憲法改正推進本部の顧問でもあります。首相からは党案の取りまとめ役を期待されているのでは。
取りまとめ役はあくまで推進本部の保岡興治本部長だ。安倍総裁からは「自分はいつも党本部にいることはできないので、代わりに保岡さんの相談に乗ってください」と言われている。
―党案を作る際、連立を組む公明党など他党と意見交換や調整はしますか。
目的は党案を作ることではなく、国会発議をし、国民投票で過半の賛成を得ることだ。だから、公明党や日本維新の会と合同案を出すか否かは別にして、何らかの話はしないといけない。話し合いもせずにポンと出すと、合意が得られるかどうかの目測が利かなくなる。
―自衛隊をどう定義するべきだと考えますか。
それは最後に決める話だ。今回の目的は、自衛隊の合憲性に一点の曇りもなくすことだ。それ以上、自衛隊の活動範囲を広げることは考えない。具体的な文言はこれからだが、誤解を与えない表現が望ましい。(聞き手は野崎建一郎)
(2017年7月13日朝刊掲載)