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[「9条加憲」を考える 中国地方の国会議員に聞く] 公明党 斉藤鉄夫氏(比例中国)

専守防衛の原則が重要

  ―公明党がこれまで主張してきた「加憲」とはどのような考えですか。
 「平和主義」「国民主権」「基本的人権の尊重」の3本柱からなる現行憲法は優れた憲法だ。それに、社会の進歩に伴って新たに生まれた価値観を加えるのが、党の加憲の考え方だ。

 例えば環境権。安全な環境で生きる権利だ。今ある地球環境問題は人類の存在を危機にさらす。また、高度情報化社会の下、プライバシー権について考える必要もある。こういった「新しい人権」などが、加憲の対象になり得る。

  ―安倍晋三首相が提案した9条への自衛隊の「加憲」は、公明党の考え方に合いますか。
 党内には、両論ある。国民の間で定着した存在である自衛隊を、憲法にあえて書く必要はない、といった考え方が一つ。一方、自衛隊の3文字がないのはやはりおかしいので平和を守る実力組織として明記しよう、との意見もある。

 2015年9月に成立した平和安全法制(安全保障関連法)を議論した際、私たちは憲法が許す「自衛の措置の限界」を明確にした。専守防衛を出ない範囲で、自衛隊が集団的自衛権を一部行使できることにした。それならこれまでの憲法解釈と矛盾しない。自衛隊を明記することによって、この解釈が変更になることを恐れている。

  ―個人としての見解は。
 私は衆院憲法審査会の委員であり、党の憲法調査会でも会長代理という立場だ。これから党内議論を始める時に、自分の意見を表明するのは控えたい。

  ―自民党内には本来、戦力不保持を定めた9条2項を削るべきだとの意見があります。
 専守防衛としての自衛隊の合憲性は、長い憲法解釈の議論によって培われた。2項があったからこそ、ほとんどの国民が自衛隊を支持してきた。ある意味では、2項と、戦争放棄を掲げた1項があったからこそ、建設的で穏やかな議論により自衛隊を認め、育ててきたと言える。

 党内には、自衛の措置の限界は1ミリたりとも超えさせえてはいけない、という共通認識がある。限界が変わってしまうような内容になるのなら、党として反対せざるを得ない。

  ―首相は20年施行を目標に掲げています。
 憲法審査会の現場を知らない提案だ。私は前身の憲法調査会にも所属していたが、議論を積み重ね、改憲の国会発議は幅広い国民の合意を得てやるとのコンセンサスができている。国民を分断する国民投票ではいけない。だから野党第1党の民進党の合意を含む形での改憲が大事だ。期限を区切ると議論が先鋭化し、かえって合意を遠ざける。

  ―野党4党は、安倍政権の下での9条改憲に反対しています。
 「安倍首相なら駄目」というのはおかしい。政局を憲法論議に持ち込むのは本末転倒だ。真摯(しんし)に建設的な議論をしなければならない。(聞き手は田中美千子)

(2017年7月15日朝刊掲載)

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