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被爆直後の広島 VRに 福山工業高生 来月公開 悲惨さ追体験

 福山工業高(福山市)の生徒が、被爆直後の広島の爆心地付近を再現するバーチャルリアリティー(VR)映像を作っている。被爆者の声を聞き、被爆前の街のVRに加えて、破壊された街も再現することにした。悲惨な光景の表現に葛藤しながらも、被爆前後の対比を体感できる作品を目指す。

 VRはゴーグル型の装置を着け、映像と音により360度の仮想空間を表現。コントローラーを使って歩くような体験もできる。

 爆心地から半径300メートルをエリアに約3分の作品を目指す。まず、被爆前の街が映し出され、空襲警報が鳴る。爆音が響き目の前が白く光った後、空間は被爆直後に切り替わる。青空は暗闇となり炎が上がる。建物はがれきに、広島県産業奨励館(現原爆ドーム)は骨組みが見え、遺体が横たわる。建物が燃える音、ちりなども表現している。

 昨年11月に企画を始めた。計算技術研究部の2、3年生約10人が担当。同部は2010年から爆心地付近のコンピューターグラフィックス(CG)も作っており、資料を活用する。これまで被爆者たち延べ約100人から証言を聞いた。「地獄を描き伝えてほしい」との声に接し、「恐ろしさを伝えるには追体験が必要」と被爆後の街の制作も始めた。

 3年の平田翼部長(18)は「原爆の熱で焼かれた肌は、通常のやけどとは全く違う。写真を何度も見て再現する作業はつらい。それでも伝えなきゃいけない」と話す。昨年6月に証言を聞いた被爆者の岡ヨシエさんが5月、86歳で亡くなった。3年の桑田紘希副部長(17)は「早く完成させたい思いが強まった」と話す。

 まず被爆後のVRを来月11日、福山市人権平和資料館で公開する。被爆前も含めた全体は、来夏の完成を目指す。同部の長谷川勝志顧問は「映像には怖さもある。その恐怖こそが原爆だと伝われば」と話す。(高本友子)

バーチャルリアリティー(VR)技術
 コンピューターで作り出した映像や音で、現実の疑似体験ができる技術。ゴーグル型のディスプレーなどを使い、使用者の視覚、聴覚、触覚を刺激する。ゲームなどに活用されている。

(2017年7月20日朝刊掲載)

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