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社説・コラム

[気になる@広島] 平和記念公園の修学旅行生 何を歌っているの?

「大地讃頌」など3曲人気

 広島市中区の平和記念公園で、修学旅行の子どもたちの姿をよく見掛けます。中でも、白血病で亡くなった佐々木禎子さんをモデルとする「原爆の子の像」の前では、整列して合唱している姿が目立ちます。どんな歌を歌っているのでしょうか。

各校 平和への思いにじむ

 胎内被爆者で広島被爆者援護会の「平和学習講師」を25年続ける石原智子さん(71)=安佐南区=は、毎年約200校に講話をしています。石原さんによると、公園内には約50の慰霊碑や記念碑があり、合唱する学校の半数近くが「原爆の子の像」の前で歌声を響かせます。

往時の定番しのぐ

 近年、不動の人気なのが「大地讃頌(さんしょう)」「HEIWAの鐘」「ヒロシマの有る国で」の3曲。長い間定番だった「青い空は」「折り鶴」などをしのぐ勢いです。

 「母なる大地の懐に 我ら人の子の喜びはある」の歌い出しで始まる「大地讃頌」は、西区出身の詩人大木惇夫(1895~1977年)が作詞しました。原爆の惨事をも包み込む大地への感謝が込められた歌です。

 富山県南砺市の吉江中は、97年の修学旅行で歌いました。その歌声に感動した被爆者が被爆エノキ2世の苗を贈り、両者の交流がスタート。それ以後、大地讃頌を歌うのが恒例となりました。

 ことしも3年生66人が披露。溝口光梨さん(15)は「20年歌い継いできた大切な歌。エノキとともに託された平和の思いを歌声に込めている」と話します。

沖縄ちなんだ曲も

 岐阜市藍川中3年の132人は、沖縄出身のシンガー・ソングライターのオリジナル曲「HEIWAの鐘」を歌いました。2000年の九州・沖縄サミットで紹介され、注目を集めた曲。「戦争で大きな被害を受けた沖縄と広島は、平和への願いが共通する」との思いで選曲しました。

 京都市の松尾小6年の112人は、「ヒロシマの有る国で」を合唱しました。命の尊さや戦争の惨状をストレートに訴える歌詞が印象的です。中岡明子教諭(43)は「禎子さんと同年代の子が像の前で歌うことで、当時に思いを巡らせてほしい」と狙いを語ります。

 どの曲を歌うのかには、各学校の平和への思いが込められています。中区の主婦坂木由美さん(45)は「未来を担う子どもたちが、平和について真剣に考えているのが伝わる」と目を細めます。

 皆さんも時折、足を止めて、耳を傾けてみてはいかがでしょうか。(栾暁雨)

(2017年7月24日朝刊掲載)

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