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ひろしまハウス平和を紡ぎ10年 カンボジアの交流施設 来月から記念行事

被爆と復興を発信 教育支援の資金募る

 内戦を乗り越えたカンボジアと被爆地をつなぐ拠点として、広島市民有志の手で首都プノンペンに造られた平和交流施設「ひろしまハウス」が9月で開館10周年を迎える。資金などの課題も抱えており、8月7日から10月末まで現地で記念行事を繰り広げ、あらためて存在をアピールする。

 運営するNPO法人ひろしま・カンボジア市民交流会(広島市中区)によると期間中、ハウスを住民や外国人観光客らに開放して平和パネル展を開く。被爆直後の広島の街や熱線・爆風・放射線による被害、戦後の復興に向かう光景などパネル30枚を展示する。

 カンボジアでは内戦時の有力者がなお各地で実権を握り、「内戦を振り返りたくない」という国民感情もあって当初、ハウスが構想した内戦の被害などを伝える展示は難しいまま。10年を迎え、ヒロシマを伝えることで平和の尊さをあらためて発信したいという。

 ハウス以外でも、プノンペンなど3都市の小学校や児童養護施設でアートとスポーツの交流を計画する。広島市西区のアーティスト石原悠一さん(34)が平和をテーマにした絵を子どもたちと描くほか、同区出身のサッカー選手で昨年末からハウスの現地マネジャーを務める友広壮希さん(25)の指導でサッカーのミニゲームを行う。

 ハウスは1994年の広島アジア競技大会に参加したカンボジア選手との交流をきっかけに広島市民の建設運動によって完成し、2007年に開館した。その2年後からは東京の社会福祉法人と共同で、貧しい子どもへの無償の教育と給食提供の活動を続けてきた。

 それには年200万円以上が必要だが、頼りの日本国内の公的助成の終了に伴い、社会福祉法人が昨年末で退いたためNPO法人が単独で引き継ぐ形に。資金不足を補おうと友広さんらの提案でクラウドファンディング(CF)を始め、今月末まで150万円を目標に受け付けている。

 NPO法人自体も高齢化が進み、前ほどマンパワーが確保できないのが現状という。理事長の元広島市長平岡敬さん(89)は「若い世代の新しい考えも取り入れて活動を続け、将来的には両国の懸け橋になるような平和を担う人材を広島に招きたい」と話している。(山本祐司)

(2017年7月26日朝刊掲載)

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