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新景 平和記念公園かいわい <5> 水上交通 移ろい 川面に重ね

 世界遺産の原爆ドーム(広島市中区)前を流れる元安川の護岸に、米ニューヨークのイエローキャブを思わせる黄色い水上タクシーが到着した。そばを白い客船が通る。原爆で往時の色彩を失ったドームと比べ、川面の色彩は鮮やかだ。

 被爆直後、川には水を求める市民の遺体が折り重なった。72年目の夏を迎える川底には、ドームから吹き飛んだとされる石材や破片が残る。その川では今、四つの航路が観光客を運ぶ。

 4月に就航した水上タクシーは、JR広島駅前や縮景園と結ぶ。このほか、厳島神社がある廿日市市宮島とを結ぶ世界遺産航路やクルーズが、水の都・広島を巡る。

 中区のアルバイト西山亜香里さん(20)は「川が流れる静かな空間が平和記念公園の魅力の一つ。光景は変わっても、平和を感じる場であってほしい」と願う。

 8月6日、元安川には被爆者を慰霊する灯籠が浮かび、夜の川面を照らす。川は人々の平和への願いを受け止めながら流れ続ける。(菅田直人)=おわり

(2017年7月29日朝刊掲載)

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