連載・特集

　 ―憲法改正の必要性を訴えていた旧維新の党に所属していました。改憲すべきだとの考えですか。
　改憲はするべきだという立場だ。日本は中央集権が強いので地域主権を憲法に明記すべきだし、環境権などの新しい人権を盛り込む必要があるとも考えている。ただ、９条は今のままでいいと考えている。

　 ―９条が現状のままでいいと考える理由は。
　９条には、唯一の被爆国である日本が、世界平和に向けて果たす役割の思いが込められている。また、今の条文の範囲で自衛隊があるから、軍備拡張や海外派兵に一定の歯止めがかかっているのではないか。

　 ―安倍晋三首相は、９条１項、２項は維持し、自衛隊を書き加える「加憲」案を提示しました。
　自衛隊を憲法に位置付けたいとの思いは、一定に理解できる。個別的自衛権の範囲に限って自衛隊を明記するのは一つの方法だと思う。ただ、与党は安全保障関連法で集団的自衛権の行使を一部容認しており、個別的自衛権に限定した書き方はしないだろう。そうなると、行使できる自衛権について解釈の余地がどんどん広がる可能性がある。デメリットが非常に大きい。

　自衛隊を明記した場合、戦力不保持を定めた２項と条文上は矛盾してしまう。民進党も自民党も、自衛隊は今の憲法では合憲だと捉えているのだから、加憲は必要ない。

　 ―民進党内は、９条について護憲から改憲まで多様な意見があります。見解を集約できますか。
　確かに党内にはいろんな意見を持った議員がいる。しかし、政権を担う責任政党を目指す以上は、対案を示す必要がある。党の憲法調査会で議論していくことになるだろうが、相違を乗り越えて見解をまとめることができないなら、解党するくらいの危機感を持って向き合うべきだ。

　 ―党内の議論はどう進むとみますか。
　９条は現条文のまま守り、他の条文は改正するというのが大多数の党議員の意見だと思う。

　 ―野党４党は「安倍政権下での９条改悪に反対」で合意しました。
　民進党内の議論は深めないといけないが、野党連携の一致としては、これくらいの内容でいいと思う。

　政府は、憲法順守を求められる立場にある。だから首相が改憲の提案をしたことは大きな問題がある。自民党総裁としての発言だと説明しているが、国民は首相の発言として受け止める。また、提案は唐突だし、２０２０年施行という目標も、じっくり議論をしていくには早過ぎる。手続きが乱暴だ。何でもいいから憲法を改正したくて仕方がないようにしか思えない。（聞き手は河野揚）

（２０１７年７月３１日朝刊掲載）