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悲劇 次代に伝えねば 被爆体験 聞き取りスタート

 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市中区)が、本年度の被爆体験の聞き取り事業を始めた。高齢や病気などで手記を書くのが難しい被爆者に代わり、職員が体験記をまとめる。6日には職員2人が、被爆しながらも看護学生として救護に当たった上野照子さん(82)=西区=から話を聞いた。

 上野さんは当時、広島赤十字病院(現広島赤十字・原爆病院、中区)の看護師養成所2年生だった。敷地内の寄宿舎で患者の食事を作っている最中に被爆し、倒壊した建物の下敷きになった。

 聞き取りは祈念館の一室で約2時間に及んだ。上野さんは寄宿舎に火の手が回り、下敷きになったままの人たちを助けられなかった無念さや、医療品が足りず、けが人を十分手当てできなかった悔しさを振り返った。

 「この年になっても忘れられない。子どもたちが幸せに暮らせるよう、核兵器はなくさないといけない」と言葉を詰まらせた。

 祈念館は2006年度、公募に応じた被爆者からの聞き取り事業を開始。本年度は72~95歳の11人の体験記をまとめ、館内で公開する。(田中美千子)

(2012年9月7日朝刊掲載)

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