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想像を喚起 意欲作並ぶ ヒロシマ・アート・ドキュメント

 広島から現代アートの今を発信する「ヒロシマ・アート・ドキュメント2012」が広島市中区袋町の旧日本銀行広島支店で開催されている。19回目の今年は3カ国5人のアーティストが参加。被爆建物を舞台に、新鮮な表現を展開している。

 今展には、パリにある公立の現代アートセンター「パレ・ド・トーキョー」の推薦で、同センターで学ぶ若手作家2人が出品している。シャルロット・セイデル(ドイツ)のインスタレーション(空間構成)「中庭での夢想Ⅰ」は、流れ行く雲のようなモノクロ映像を壁に投影。天窓には折り紙を連想させる赤、青、黄の正方形のフィルムを張り、中庭から差し込む光によって部屋全体を幻想的な雰囲気で包んだ。

 幼少時に読んだ核の脅威を描いた「雲」という題名の絵本と、ヒロシマの印象を重ねた。雲に見えたのは、実は自宅アパートの浴室の壁を伝うせっけんの泡。私的なイメージに基づく表現が見る者の空想をかきたてる。

 対照的にコンセプチュアル(概念的)な作風を見せるのが、もう1人の推薦作家ジェローム・アラヴェナ(フランス)。升目を描いた紙を黒い枠につるした「24分の1」は、空間の捉え方をめぐる思索を反映する。

 写真家オーレリー・ペトレル(フランス)と、版画の国際展で活躍するベテラン作家判治佐江子(三重県)はそれぞれ写真によるインスタレーションを展開している。

 市民有志でつくる「クリエイティヴ・ユニオン・ヒロシマ」(伊藤由紀子代表)の主催。22日まで。無料。午前11時~午後5時。=敬称略(西村文)

(2012年9月12日朝刊掲載)

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