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対立30年 上関に衝撃 新エネ戦略「原発ゼロへ」

 原発新増設はないと明記された14日のエネルギー・環境会議の決定。中国電力の原発建設計画がある山口県上関町は大きな衝撃に包まれた。町の誘致表明から30年。国策への賛否で対立を続けてきた住民には「30年の苦しみを知ってほしい」との思いも渦巻いた。(久保田剛)

 「国を信じて取り組んできた。その国が新規ゼロとするならば、事実として受け止めざるを得ない」。柏原重海町長は14日午後、町役場で会見し、上関原発建設が厳しくなった現実を認めた。

 人口約3500人の町は過疎と高齢化に悩む。町民の生活を守りたいとの思いで、多額の交付金が受けられる原発建設に協力してきた。だが、福島第1原発の事故から1年半。国からの意見聴取はただの一度もなく「決定」された。

 柏原町長は「意向打診があってしかるべきだ。住民サービスの維持は難しく、何らかの手当てがないのなら、人の道に外れるのではないか」。将来の町づくりへの不安と国への不満があふれた。

 「国外では原発建設が進む。雇用や経済への影響は国全体に及ぶ」。推進派の住民団体、上関町まちづくり連絡協議会の井上勝美顧問(68)も「決定は納得できない」と言葉を絞り出した。

 住民の大半が反対派の同町の離島・祝島。予定地周辺に漁船を繰り出すなどの反対運動の拠点となってきた。「まずはほっとした。反対してきた島民らの30年間もの運動の結果だ」。上関原発を建てさせない祝島島民の会の前代表山戸貞夫さん(62)は喜ぶ一方で、国や中電の早期の計画断念を求めた。

(2012年9月15日朝刊掲載)

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