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社説・コラム

『この人』 ヒバクシャ国際署名キャンペーンリーダーの明治学院大大学院生 林田光弘さん

平和運動 敷居下げたい

 核兵器禁止条約とは。なぜ日本政府が反対なのか。条約締結を求める「ヒバクシャ国際署名」を広げようと、各地で若者にかみくだいて講演する。「核の傘は『盾』のイメージかもしれないけど、いざとなったら米国に核を使ってもらう『やり』に近い。でも僕らそんなこと了解しましたっけ?」。3日も広島市内で同世代に投げ掛けた。

 長崎で祖父が被爆。爆心地一帯の長崎市浦上地区で育ち、小学校の課外学習で何人もの被爆者から証言を聴き、「高校生平和大使」として国内外で活動した。ただ、達成感よりも反省意識が残った。「平和運動は、参加への敷居を下げないと広がらない」。その思いから、進学した同大の仲間たちで「SEALDs(シールズ)」を結成。音楽を取り入れた「サウンドデモ」などで安全保障法制に抗議すると参加の幅が広がった。

 経歴も買われ、昨年からヒバクシャ国際署名を支えるようになった。今年は大学院を休学して専念。条約交渉会議への被爆者4人の渡米費用をインターネットで募る成果を上げた。「誰でも簡単に核兵器廃絶運動に関われる仕掛けを」。原爆の日に合わせた「広島ツアー」もツイッターなどで呼び掛けた。

 日本被団協の提唱で始まった国際署名は296万筆以上を集めた。林田さんはそこに新風を吹き込みつつ、原点も見詰める。1954年の米水爆実験によるビキニ事件に端を発し、1年余りで3千万筆を超えた原水爆禁止の国民的署名運動だ。「インターネットもスマホもない時代に、すごくないですか」。6日は自ら広島市内で街頭署名に立った。横浜市戸塚区に住む(水川恭輔)

(2017年8月7日朝刊掲載)

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