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いしぶみに刻む <4> 平和記念碑(岩国市麻里布町) 終戦前日の爆撃伝える

 岩国市中心部の公園の一角で、高さ90センチほどの天使像が台座の上にたたずむ。岩国駅前大空襲の犠牲者を悼む平和記念碑。天使は前を見据え、手を合わせて祈りをささげる。

 終戦前日の1945年8月14日、駅周辺は米軍機の集中爆撃を受けた。市史には死者517人、不明者30人とある。「辺り一面、爆弾の穴だらけ。むごいことよ」。父と弟を亡くした茶藤實さん(88)=同市山手町=は目を潤ませる。

 碑は59年、遺族たちの要望を受け市が駅前ロータリーに建立。その後、浮上した国のロータリー撤去方針を受けて、93年に現在地へ移設した。「岩国の平和のシンボル」。義母と妻、長男を失った村永計夫さん(98年に86歳で死去)は移設時の入魂式で語っている。

 毎年巡り来る「あの日」、碑前で慰霊祭が営まれる。村永さんと再婚相手との間に生まれた信夫さん(67)=同市室の木町=は父親の死後、参列を欠かさない。「戦争を繰り返さない、という親の気持ちを引き継ぎたい」

 駅周辺整備事業に合わせ、市は2019年度に記念碑を駅前に戻す方針だ。慰霊祭を主催する麻里布地区自治会連合会の森口勝征会長(73)は「悲劇を風化させないためにも、多くの人の目に触れてほしい」と願う。(松本恭治)

(2017年8月8日朝刊掲載)

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