社説・コラム

天風録 『孫世代の原爆』

 祖父母を頼って農山村に移り住む若者が増えているそうだ。中国山地のある町の調査で気付いたという小田切徳美明治大教授が2年も前に「あえて言えば孫ターン」と全国町村会の機関誌で名付けている▲孫世代から見れば、土地勘も血縁もあるから地域にすんなり溶け込める。祖父母世代は、若々しい言動に刺激を受けつつ、後継ぎ候補が現れて目を細めているのかもしれない。お互いを必要としている関係なのだろう▲孫たちの姿は、記憶を受け継ぐ試みでも目立つ。原爆ドームを背景に被爆者を囲む子や孫らの集合写真で平和への思いを表現しているのだろう。孫世代の女性芸術家たちが「被爆3世」をテーマに広島市内で開いた展覧会を訪ねた▲会場に、広島と長崎で2度閃光(せんこう)を浴びた山口彊(つとむ)さんの孫、原田小鈴さんも長崎から駆け付けた。二重被爆者の3世として祖父の半生を紙芝居を通して訴え掛けた。淡々としつつも説得力のある語り口に孫の力を感じた▲きのう、長崎原爆の日。3世の展覧会は長崎に会場を移して、発信を始めた。子どもには話せなくても孫世代には気負わず話せる。そんな被爆者も多い。祖父母世代の語りに耳を傾ける夏になればいい。

(2017年8月10日朝刊掲載)
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