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オスプレイ あすにも岩国で試験飛行 政府が「安全宣言」

 日米両政府は19日、岩国市の米海兵隊岩国基地に先行搬入されている垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの国内運用について外務、防衛当局者による日米合同委員会を開き、低空飛行訓練時の高度制限などを柱とする安全確保策で正式に合意した。森本敏防衛相らは「オスプレイの運用の安全性は十分確認された」とする「安全宣言」を発表。山口県庁で山本繁太郎知事、岩国市役所で福田良彦市長とそれぞれ会い、安全策と試験飛行の開始に理解を求めた。

 これを受け、米側は岩国基地で21日にも試験飛行を開始する。先行搬入されている12機は瀬戸内海から関門海峡上空を抜け、下関市沖の日本海で2週間訓練する見通し。配備先の普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)へ早ければ28日にも2機編隊で計6組に分け順次移動させ、10月から本格運用する構えだ。

 森本防衛相から説明を受けた山本知事は「安全策について真摯(しんし)に努力していただいた」と一定の理解を示したが「安全性への懸念を完全に払拭(ふっしょく)し切れてはいない」と答えた。

 福田市長は「市民感情を踏まえ、認められない気持ちに変わりない」と強調。「国が安全保障上の必要から飛行を認めるのであれば、合意内容が順守され、飛行の責任を政府に持ってもらう覚悟を要請する」と述べた。

 森本防衛相は福田市長との会談後、記者団に「安全性の確認作業の完了をもって、米側の飛行を再開させる日米間の合意を実行することに変わりない」と表明した。

 しかし、沖縄などの関係自治体は「機体の安全に特段の問題はない」などとする「安全宣言」に反発しており、配備には今後、曲折も予想される。

 安全確保策は、沖縄配備後に全国各地で予定される低空飛行訓練について、通常は米軍機に適用されない航空法の安全高度150メートル以上の高度を順守させ「原発施設や史跡、人口密集地の上空は回避する」などとしている。

オスプレイ「安全宣言」 【解説】 「見切り発車」再び 岩国駐留長期化の指摘も

 米海兵隊岩国基地に先行搬入されている垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機をめぐり、米軍は政府の「安全宣言」を受け、近く国内運用を始める。7月の搬入と同様、安全性に不安を持つ地元の頭越しの強行。日米同盟の深化を図る政府がしゃにむに「見切り発車」を繰り返す構造を浮き彫りにした。

 森本敏防衛相の説明を受け、山口県の山本繁太郎知事、岩国市の福田良彦市長とも「試験飛行は認められない」とした。しかし、オスプレイ配備は日米安保の事前協議の対象外。自治体や日本政府に拒否権はない。森本防衛相は「飛行再開という日米間の合意実行に変わりない」と米側への配慮をにじませた。沖縄国際大の前泊博盛教授(基地経済論)は「配備を遅らせる、機数を減らすなど米側の譲歩は何も引き出していない」と批判する。

 米側は試験飛行後、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)への配備を予定している。軍事評論家の前田哲男氏は「沖縄の反対姿勢が変わらなければ、再び岩国への駐留が長期化することもあり得る」と指摘。また米海軍佐世保基地(長崎県佐世保市)を母港とする強襲揚陸艦ボノム・リシャールに移動し、普天間入りをうかがう可能性もあるとみる。日米同盟の深化の名の下、その影響は限られた地域だけにとどまらない可能性がある。(酒井亨)

オスプレイ「安全宣言」要旨

 防衛、外務両省が19日発表した米軍垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ「安全宣言」要旨は次の通り。

【沖縄配備の意義】
 米海兵隊を含む在日米軍全体の抑止力が強化される。一層厳しさを増す安全保障環境の中で、南西方面におけるわが国の防衛態勢強化とあいまって、日米間の動的防衛協力が拡充され、地域の平和と安定に大きく寄与する。

【再発防止策】
 4月にモロッコで起きた事故と6月に米フロリダ州で起きた事故の教訓を踏まえた訓練の実施▽機長の指揮監督責任の徹底▽風の状況による制約など性能の限界が生じる状況下の訓練の徹底▽編隊飛行中の十分な意思疎通の確保▽追い風や後方乱気流の影響に関する説明の確実な実施▽すべての搭乗員に日本固有の特性(地形・気候)を熟知させる▽整備員教育の徹底。

【安全確保策】
 航空法が定める安全高度150メートル以上で飛ぶ。原発施設、史跡、人口密集地の上空は回避▽米軍施設・区域周辺の飛行経路は病院や学校上空を避けて設定する。可能な限り海上を飛行▽近距離での低空編隊飛行は米軍施設上空に限定▽米軍普天間飛行場の騒音対策のため深夜、早朝の飛行は必要最小限に制限する▽「垂直離着陸モード」は米軍施設上空に限定▽「転換モード」は飛行時間を可能な限り短くする▽日本国内の沖縄以外の場所で訓練を行う可能性を日米間で検討。

【結論】
 機体の安全に特段の問題はない。オスプレイを危険と考える根拠は見いだし得ない。日本政府として安全性は十分確認されたと考える。地域住民の安全に最大限の配慮がなされるとの前提に立って、わが国におけるオスプレイの飛行運用を開始させる。

(2012年9月20日朝刊掲載)

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